研究課題
外生殖器は体幹部から隆起・伸長し、その内部では総排泄腔が尿生殖洞直腸中隔の伸長によって分離され直腸肛門と尿道という管構造が形成されるとされている。また、外生殖器は外胚葉性上皮、内胚葉性上皮、間葉という起源の異なる三胚葉性組織から形成される。外生殖器形成には様々な分泌性細胞増殖因子シグナルが関与していると考えられているが、未解明な点が多い。本研究では外生殖器形成におけるFGFシグナリングの機能解析を主軸に、どのような細胞、分子メカニズムで外生殖器が形成されるのか明らかにすることを目的としている。 まず、外生殖器形成過程におけるFGFシグナル伝達領域を同定した。外生殖器伸長時には間葉で強いFGFシグナルが観察され、その後の尿道形成過程では三胚葉全てでFGFシグナルが観察された。これらの結果から、FGFシグナリングは外生殖器の伸長及び尿道形成に関与している可能性が示唆された。次に、遺伝子改変マウスを用いて外生殖器の伸長並びに尿道形成におけるFGFシグナリングの機能を解析した。生殖結節全体でFGFシグナリングを低下させたマウス胚は生殖結節の伸長が著しく阻害された。生殖結節の内胚葉性上皮及び外胚葉性上皮特異的にFGFシグナリングを低下させたマウス胚は、どちらも外生殖器の伸長に顕著な異常は認められなかった。よって、生殖結節の伸長には主に間葉におけるFGFシグナリングが貢献していると考えられた。内胚葉性上皮特異的FGFシグナリング低下マウス胚は尿道上皮の分化が阻害されていた。一方、外胚葉性上皮特異的FGFシグナリング低下マウス胚は生殖結節外胚葉性上皮の分化阻害のみならず、間葉組織の形成不全、更には尿道上皮組織の分化阻害が認められた。 本年度の結果より、FGFシグナリングが生殖結節の伸長を制御し、尿道形成過程ではFGFシグナリングを介した上皮間葉相互作用が重要であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度に実施予定であった外生殖器形成過程におけるFGFシグナル伝達部位の同定を行った。その結果に基づき、外生殖器形成過程におけるFGFシグナルの機能解析を行うための、条件付き遺伝子改変マウス作成に成功したため。
今後は、平成23年度に作成した条件付き遺伝子改変マウスについて、外生殖器の形態観察、細胞増殖・細胞死解析等の細胞レベルの解析を行うとともに、外生殖器形成過程におけるFGFシグナリング下流応答因子の探索を行う予定である。 また、外生殖器形成過程における分泌性細胞増殖因子の機能制御機構の新規探索を行う計画である。特に、分泌性細胞増殖因子の機能発現に必須であるヘパラン硫酸プロテオグリカンについて、その発現パターンと機能を解析する予定である。
研究費は、外生殖器形成過程におけるFGFシグナリング下流応答因子探索を行うためのマイクロアレイに使用する予定である。 また、外生殖器形成過程におけるヘパラン硫酸プロテオグリカンの発現パターンを解析するための関連抗体購入に使用する予定である。 その他、RNA in situ hybridization、抗体染色等に必要な消耗品を購入予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Congenit Anom (Kyoto).
巻: Sep;51(3) ページ: 102~109
10.1111/j.1741-4520.2011.00318.x