研究課題/領域番号 |
23790234
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
矢嶋 浩 自治医科大学, 医学部, 講師 (10433583)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 発生 / 進化 / 分化 / 一次感覚神経 / 脊髄神経節 / 神経堤細胞 / エンハンサー / Six遺伝子 |
研究概要 |
「RB細胞と脊髄神経節神経細胞の違いを生み出す発生機構の解明」 アフリカツメガエルRB細胞ではその発生の後期、細胞死に先行してSix1が発現するが、脊髄神経節神経細胞ではほ乳類や鳥類と同様にその発生初期からSix1を発現している。エレクトロポレーション法を用いてアフリカツメガエル胚の発生後期RB細胞にsiRNAを導入し、Six1の発現をノックダウンしたところ、RB細胞の減少を阻害することが出来た。さらに、siRNA認識配列にサイレント変異を持ったSix1 mRNAの共導入によってその表現型を打ち消すことが出来た。Six1を本来の発現開始時期よりも早く強制発現すると、RB細胞の発生プログラムを阻害し、同時に脊髄神経節様の神経細胞を本来の発生よりも早期に生じさることと併せると、アフリカツメガエル一次感覚神経発生過程において、Six1はRB細胞から脊髄神経節神経細胞への切換を担っていることが明らかとなった。「ヘテロクロニックなSix遺伝子発現をもたらす機構の解明」 アフリカツメガエル胚においては、マウス体幹部一次感覚神経におけるSix1遺伝子発現を司るエンハンサーはツメガエルの相同な配列よりも早い時期に活性を示す。この活性開始時期の違いを司る機構を解明するため、マウスと同じく羊膜類でRB細胞を持たず、マウスよりも簡便に遺伝子導入が可能なニワトリ胚を用いて検証を行った。その結果、ツメガエルの配列は脊髄神経節のみで活性が認められたが、マウスの配列は脊髄神経節に加え、神経管内部にも活性が観察された。脊髄神経節は神経堤細胞由来であり、ニワトリ胚では神経管閉鎖以降に神経堤細胞の移動が開始する。ニワトリ胚神経管内部での活性がマウスの配列の早期活性の性質によるものであるのか、鳥類とほ乳類の一次感覚神経発生様式の違いであるのか、等の検証が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画はほぼ予定通り遂行中である。「ヘテロクロニックなSix遺伝子発現をもたらす機構の解明」におけるニワトリ胚の利用は、研究実施計画には明記されていないものであるが、研究目的達成のための新たなアプローチとして期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
「RB細胞と脊髄神経節神経細胞の違いを生み出す発生機構の解明」のため、レーザーマイクロダイセクションとマイクロアレイを用いてアフリカツメガエル一次感覚神経の遺伝子発現プロファイルを取得し、RB細胞及び脊髄神経節神経細胞に特異的に発現する遺伝子群を同定する計画であった。共同研究によりRB細胞に特異的に発現する遺伝子が見出される可能性があるため、それを利用した研究目的達成の方策も検討する。「ヘテロクロニックなSix遺伝子発現をもたらす機構の解明」に関して、複数のマウス系統を作製する代替としてニワトリ胚が利用可能かどうかを検証し、より簡便に短期間で研究目的を達成する方策も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「RB細胞と脊髄神経節神経細胞の違いを生み出す発生機構の解明」 アフリカツメガエルRB細胞に特異的に発現する遺伝子の発現とその変化を、発生段階を追った組織切片を用い、in situハイブリダイゼーション法や免疫組織染色で検証する。また、強制発現やsiRNAを用いたノックダウンによってその機能を検証する。「ヘテロクロニックなSix遺伝子発現をもたらす機構の解明」 一次感覚神経におけるSix1遺伝子発現を司るエンハンサーの機能配列や結合因子をアフリカツメガエル胚とニワトリ胚を用いて検討する。その結果を基にマウス個体での実証を行う。「様々な動物種での一次感覚神経の発生とSix遺伝子発現、エンハンサーの比較」 引き続き様々な動物種を用いて、一次感覚神経発生様式とSix1遺伝子の発現、及びSix1遺伝子エンハンサー配列の間に関連が導き出せるかどうかを検討する。
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