「ヘテロクロニックなSix遺伝子発現をもたらす機構の解明」 体幹部一次感覚神経発生におけるSix1遺伝子発現の開始は、アフリカツメガエルよりもマウスが早期であり、その違いは遺伝子発現を司るエンハンサーに起因する。エンハンサーのどの領域がより早い発現を担う部分なのかを明らかにするため、エンハンサーの中でも配列の保存性が高く、転写因子や核内受容体の結合部位が集中している領域(以下、コア配列)をツメガエル・マウス間で交換し、そのエンハンサー活性をマウスと同じ羊膜類のニワトリ胚で検証を行った。その結果、マウスコア配列を持つツメガエルエンハンサーはマウスエンハンサーに近い活性を示した。これはコア配列にSix1遺伝子発現のタイミングを司る部分が存在することを示唆しており、コア配列の中の鍵となる部分とそこに結合する因子の探索を継続して行っている。 「様々な動物種での一次感覚神経の発生とSix遺伝子発現、エンハンサーの比較」 メダカ、ツメガエル、ニワトリ、マウスのSix1遺伝子一次感覚神経エンハンサーの活性の違いをニワトリ胚脊髄神経節で検討した。その結果、ニワトリ発生におけるSix1遺伝子本来の発現時期と発現場所を再現するのはニワトリのエンハンサーのみで、メダカのエンハンサーはその活性が観察されず、ツメガエルとマウスのエンハンサーは神経細胞のみならずグリア細胞にもその活性が観察された。ツメガエルのエンハンサーもマウスのエンハンサーも、本来の環境であるツメガエル胚とマウス胚では、それぞれのSix1遺伝子発現を再現出来ることから、高い配列保存性の中に種特異性が獲得されているものと考えられる。この差異が、種間のSix1遺伝子発現の違いや一次感覚神経の種類や形態の違いと相関があるか否かを今後検証する必要がある。
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