本研究では、遺伝子やシグナル伝達機構が進化的に保存されたモデル動物であるショウジョウバエを用いて、血液脳関門 (BBB) のバリア機能の維持に必要な遺伝子の in vivo RNAi スクリーニングを行い、得られた候補遺伝子について、ショウジョウバエの強力な遺伝学を用いてその分子機構を生体レベルで解析する事を目的とする。前年度までの予備実験の結果、既知の BBB 関連遺伝子の RNAi では、アッセイした全ての遺伝子で目的の表現型が得られる事が分かっており、スクリーニングに適した系である事は実証済みである。 平成24年度は前年度に開始したスクリーニングを完遂し、目的の表現型を示す複数の候補遺伝子を得た。これまでのスクリーニングで得られた遺伝子は、表現型の特徴から以下の3グループに大別できる事が分かった。①BBB を構成する細胞の発生、分化、移動、生存には異常が認められないが、BBB 機能が低下している。②SJ が一度は正常に形成されるが、加齢と共にその機能が低下する。③BBB を構成する細胞の発生、分化、移動のいずれかに異常がある為に SJ が正常に形成されない。 dsRNA の off target 効果の可能性を除く為に候補遺伝子の機能欠失型変異体を用いて表現型の再現性を確認し、目的とする候補遺伝子の絞り込みを行った。これらの遺伝子のうち、進化的に保存された癌関連遺伝子が BBB の制御に関わる実験結果を得た。今後は、本遺伝子が関与する BBB の制御機構について解析を進める。
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