研究課題
本研究の目的は、網膜錐体視細胞の発生・分化に重要な遺伝子を同定し、その分子機構を解明する事である。ヒトの視覚において色覚と明所視を司る錐体細胞は、胎生期に発生し、また数も少ない事から、その発生と維持のメカニズムはほとんど分かっていない。そこで、胎生期の網膜で発現が強く、まだ網膜で機能が知られていない遺伝子に注目し、生体レベルで新規錐体細胞発現遺伝子の機能解析を行うため、候補遺伝子のノックアウト(KO)マウスを作製し、錐体細胞の発生・分化・維持の分子機構を解明する。 申請者は、胎生期の視細胞前駆細胞の部位に、強く発現が認められるTaraco遺伝子のKOマウスを作製するため、ES細胞を用いてTaraco遺伝子をネオマイシン耐性遺伝子に置き換え、Taracoへテロマウスが生まれた。今後、このヘテロ同士を掛け合わせて得られる、Taraco遺伝子欠損網膜の組織学解析へ進む。 また、視細胞の運命決定に重要なOtx2の発現を調節するために、転写因子Rax遺伝子が錐体細胞の発生時期である胎生期に重要である事を発見し、その分子制御メカニズムを解明し報告した (J Neurosci., 2011)。申請者は、Otx2の発現調節領域の探索にトランスジェニックマウスを用いて同定し、この約500bpの領域が、転写因子RAXによって活性化されOtx2の発現を調節していること、また網膜前駆細胞の増殖中ではこの領域はNotch-Hesシグナルによって、RAX の活性が抑制されていることを解明した。
1: 当初の計画以上に進展している
錐体視細胞に発現が強い遺伝子TaracoのKOマウス作製に加え、転写因子RAXが視細胞の発生に重要であることを発見し、その分子制御メカニズムを解析し報告することができたから。
転写因子RAXは、目の発生に重要であることは知られているが、KOマウスは目が全く形成されないことから今まで解析が出来なかった。そこで、申請者はRAXを視細胞特異的なコンディショナルノックアウトマウスの作製によって、胎生期のRAXの機能を解明する事ができた。今後は、RAXの出生後の機能について、錐体細胞の発生および成熟に関与しているかどうか調べていく予定である。また、錐体細胞の発生時期に強い発現がみられたTaraco遺伝子のノックアウトマウスの解析へ進む。
網膜の視細胞の組織学的な解析を行うため、網膜の各細胞に特異的なマーカーを用いて免疫染色を行う。免疫染色に必要な抗体を購入する。培養細胞やマウス網膜組織を用いて分子生物学的手法を用いて実験を行うため、試薬やマウスを購入する。さらに、消耗品(プラスチックシャーレ、チューブ、ピペットなど)を購入する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
Dev Growth Differ.
巻: in press ページ: in press
巻: 54(3) ページ: 341-348
J Neurosci.
巻: 16;31(46) ページ: J Neurosci.
Nat Neurosci.
巻: 14(9) ページ: 1125-1134
PLoS One
巻: 6 (5) ページ: e19685