研究課題
本研究ではまず、新生仔期の近位尿細管細胞ミトコンドリア内膜における、Maxi-Kチャネルの存在を確認するために、生後0~7日目の新生仔マウスの腎臓から皮質領域を切り出し、機械的処理および酵素処理を施した後、遠心法により近位尿細管セグメントを分離した。さらに、単離した近位尿細管細胞からミトコンドリア内膜の標本 (ミトプラスト)を作成し、パッチクランプ法を行った。その結果、Maxi-Kチャネルを示唆するような電流応答が得られず、新生仔期の近位尿細管細胞ミトコンドリア内膜からだけでは、十分な量のMaxi-Kチャネルが得られない可能性が考えられた。そこで、生後0~7日目の新生仔マウスの腎臓から皮質領域と髄質領域とを切り分け、Real time PCR法を用いてMaxi-KチャネルのmRNA発現状態を調べた。その結果、皮質領域に比べ、外髄質領域においてMaxi-Kチャネルの発現が有意に高かったことから、近位尿細管のみならず、ヘンレ上行脚や集合管細胞のミトコンドリアについても対象に加えるべきと考えられた。 一方、上記の研究と平行して行なった研究の結果、Maxi-Kチャネルの発現とは対照的に、電位依存性遅延整流型KチャネルのひとつであるKv1.3については、胎生期の早い時期から、マウス腎臓における発現がみられた。実際、発生腎より単離した細胞に対し、パッチクランプ法を行った結果、このチャネルの存在を示唆する電位依存性の電流応答が得られた。さらに、マウス胎児より摘出した胎生腎に対し、Kv1.3チャネルの阻害薬を加えたうえで組織培養を行った結果、その発育が有意に障害されたことから、Kv1.3チャネルは胎生腎の分化や増殖、アポトーシスの抑制に関与している可能性が高いと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究を遂行することにより、ミトプラストの作成法や、それに対する特殊なパッチクランプ法の手技に精通することができた。これまでに行ってきた研究により、新生仔近位尿細管ミトコンドリア内膜上におけるMaxi-Kチャネルについては、電気生理学的な同定は困難であることが予想された。しかし、同時に進めてきた研究を通し、同じ電位依存性KチャネルであるKv1.3については、電気生理学的な同定が可能であることを明らかにすることができ、さらに腎臓の分化・増殖過程に関与することを示唆する結果も導くことができた。
本研究の最終目標は、発生腎の分化・増殖過程におけるKチャネルの関与を明らかにすることである。従って、今後、ミトコンドリア内膜におけるMaxi-Kチャネルの解析が難しければ、対象をKv1.3に変更して、引き続き研究を進めていく。
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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