研究課題/領域番号 |
23790249
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
篠原 徹二 大分大学, 医学部, 特任助教 (60457629)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Leptin / Atrial fibrillation / Atrial fibrosis |
研究概要 |
糖尿病の病態は血中のレプチン蛋白に強く影響を受けている。一方,糖尿病患者では心房細動の発生が多く起こっていることが報告されているが,そのメカニズムは明らかではない。我々は,糖尿病患者において増加している血中レプチンがIfチャネルのリモデリングを起こして心房細動発現に関与しているのではないかと考え,研究を行った。まず,第一段階として,レプチンが心房筋線維化にどのように影響を与えるかを検討した。アンギオテンシンIIのマウスへの添加は左房筋の線維化を引き起こし,心房細動の易誘発性を高めた。しかし,この効果はレプチン欠損マウスでは認めなかった。正常マウスではアンギオテンシンII添加によって左房心筋内のレプチン産生は増加していた。in vitoroの実験では心筋線維芽細胞へのレプチン添加は線維化を促進することを認めた。これらの実験結果から,レプチンシグナル経路がアンギオテンシンIIによって促進される心房の線維化および心房細動の易誘発性に関係していることが示唆された。このことは心房細動患者に対する新たな治療方法の発見につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病患者では血中レプチン濃度は高値である一方,心房細動の発生が多く起こっていることが報告されている。我々の現在までの研究によって,これまで明らかにされていなかった糖尿病と心房細発生の間にレプチンホルモンの関係が示唆されるデータが得られ,糖尿病患者における心房細動発現のメカニズムの解明に確実に一歩前進している。具体的には, Angiotensin IIというホルモンによって心房の線維化が誘導される際に,その誘導にレプチンシグナル経路が関与していることを証明することができた。そしてさらにその誘導が房細動の易誘発性に関係していることも併せて示すことができた。その結果については,すでに本年の第76回日本循環器学会学術集会で発表を行った。そこでFeatured Research Sessionに選ばれ,発表の際には海外からの参加者から多数の質問を受け,我々の研究結果に対して大変注目されていることが感じられた。
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今後の研究の推進方策 |
次の段階としては,当初計画していた糖尿病におけるIfチャネルのリモデリングを評価していきたいと計画している。その際,Ifチャネルリモデリングにレプチンホルモンが関与しているか否かを解明していく。関与していた場合には,そのシグナル経路を抑制することで心房細動発現の予防につながるかどうかも併せて検討していく。この実験方法として,2型糖尿病モデルラットとして,Otsuka Long Evans Tokushima Fatty Rat(OLETラット)を用いて実験を行っていく。具体的には,Ifチャネルの構成蛋白であるHCN4の蛋白量をウエスタンブロット解析で評価する。また,同時にPCRを用いてmRNAレベルでの評価も併せて行っていく。さらに,心房細動の易誘発性については,これまで我々の研究室では心臓摘出後にランゲンドルフ装置で灌流中に評価することを行っていた。我々はより実際の臨床に近い環境で評価を行うため,ラットに経食道ペーシングもしくは経静脈ペーシングを行って評価していくことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず,4月から10月までの半年間にコントロールモデルと糖尿病の動物モデル(Otsuka Long Evans Tokushima Fatty Rat:OLETラット)を購入して,Ifチャネルリモデリングの有無を検討する。さらに,そのシグナル経路を解明するために,適宜ウエスタンブロット用の抗体およびPCR用のプローブを購入する。さらに,後半の11月から3月までの期間はOLETラットを用いて心房細動の易誘発性を検討する。この際,我々はラット生体に経食道ペーシングもしくは経静脈ペーシングを行ってより実臨床に近い環境下で評価していくことを計画している。このために,EP装置,ペーシングカテーテルを含めた必要とされる様々な器具を適宜購入していくことを考えている。また,その成果を発表および新たな知見を得てさらなる研究につなげるために,積極的に学会に参加する。
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