研究概要 |
【背景および目的】糖尿病患者では血中レプチン濃度は高値である一方,心房細動の発生が多く起こっていることが報告されている。そして,心房細動患者においては洞結節機能障害が生じていることが報告されている(Joung B, et al. Circ Arrhythm Electrophysiol. 2011)。我々は,糖尿病患者においては,洞結節自動能を司っているIfチャネル蛋白のリモデリングによって心房細動が発生しやすくなっているとの仮説をもとに研究した。 【方法】II型糖尿病の動物モデル(Otsuka Long Evans Tokushima Fatty Rat: OLETF)およびコントロールマウス(Long-Evans Tokushima Otsuk Rata: LETO)を用いた。洞結節組織のquantitative reverse transcription PCR実験でIfチャネルおよびその他のリズム発生に関与する蛋白質のリモデリングを検討した。さらに,これらのラットに対して内頚静脈経由の経静脈右房ペーシングを行い,洞結節機能回復時間を評価した。 【結果】1)洞結節組織のquantitative reverse transcription PCR実験において、細胞内のCa2+ ハンドリングに関わっているリアノジンレセプターやホスホランバンのmRNAがOLETFラットにおいてLETOラットと比較して有意に低下していた。 2)OLETFラットでは,LETOラットと比較して洞結節機能回復時間が有意に延長していた。イソプロテレノール添加時の心拍上昇率も障害されていた。 【結語】糖尿病が洞結節におけるCa2+ clockを担っている蛋白のリモデリングから機能障害を引き起こす結果,洞結節機能低下が起こっていることが示唆された。どのようなメカニズムでCa2+ clock機能障害を引き起こされているのか,それを抑えるための有効な治療の有無,および糖尿病に伴う自律神経障害の影響などを今後さらに検討していく必要がある。
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