研究課題/領域番号 |
23790251
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
蓑部 悦子 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00448581)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | カルモジュリン / カルシウムチャネル / Cav1.2 / パッチクランプ法 / inside-out / ATP / カルシウムイオン / 細胞内カルシウム |
研究概要 |
L型Caチャネル(Cav1.2)のC末端部切断チャネル(Cav1.2Δ)にグリシン鎖を介してカルモジュリン(CaM)を融合させたチャネル変異体(Cav1.2ΔCaM)にパッチクランプ法を適用し、CaMによるCaチャネル活性の調節機構を調べた。L型Caチャネルには、細胞内Caイオン濃度に依存した促通(CDF: Ca2+-dependent facilitation)と不活性化(CDI: Ca2+-dependent inactivation)がありCaMがその制御に不可欠である。これについては、Cav1.2ΔCaMを用いた実験からも明らかであるが、分子機序についての十分な説明はなされていない。さらに、Inside-outによる記録では、Caチャネルの活性が細胞内Caイオン濃度依存的に調節されると同時に、CaM濃度に依存することが示唆された。よって、Caイオン濃度に加え、CaM濃度とチャネル活性の関係を明らかにすることは重要である。 これまでの研究からCaチャネルの活性維持にはCaMとATPが必須であり、その作用はリン酸化を介さないことが報告されている。今回、ATPに換えてフォスファターゼ阻害剤であるオカダ酸をCaMと共にチャネルに付加したところ、ATP + CaMと同様にチャネルの活性作用を示した。オカダ酸 + ATP + CaMでも同様な作用を示し、チャネル活性に有意差はなかった。Cav1.2ΔCaMでは、ATPの効果をオカダ酸で置き換えることはできなかった。このことから、ATPがチャネルの脱リン酸化を抑制することが示唆された。また、プロテインフォスファターゼ(PP2AやPP2B)の結合部位はチャネルC末端遠位部にあり、その配列を持たないCav1.2ΔCaMでは、脱リン酸化による影響が低いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの結果から、Cav1.2ΔCaMのCaチャネルC末端とCaMを繋ぐグリシン鎖の長さに依存してCaMの自由度が変わることが、CaMによるチャネルの調節機構を本来の形から曲げてしまうことが示唆された。そこで、グリシン鎖の長さを、チャネル活性に違いがみられた48残基と72残基の間の60残基にして、野生型チャネルと同様なCaM応答を示すよう調整することを計画し、チャネル変異体を作製した。 また、チャネルC末端部によるチャネル不活性化を検討するため、C末端ペプチドの作製も進行中である。ATPの作用とチャネルC末端遠位部との関係については、オカダ酸を用いた実験で検討中である。 成果は、学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
グリシン鎖の長さを60残基に調節した変異体のCaM濃度-チャネル活性の関係を調べ、野生型や他の変異体と比較する。これらの検討により、2分子のCaMによるチャネル調節という我々の仮説の妥当性を評価する。一般的な仮説では、チャネルC末端に結合した1分子のCaMが細胞内Ca2+濃度に依存して構造変化をおこすことがチャネル不活性化につながると考えられている。また、促通現象についてはCaM依存性キナーゼII(CaMKII)による直接作用やリン酸化が関与することが報告されている。これらの解明のために、Cav1.2ΔCaMにアミノ酸変異を導入し、仮説の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
電気生理学実験に必要な試薬、電子媒体電気部品などの消耗品への使用を予定している。また、チャネルDNAの発現系を用いて実験を行うため、培養細胞の維持(培養室の管理、試薬など)に使用する。 Caチャネルのアミノ酸変異体の作製、進行中のチャネルC末端遠位部ペプチドの作製を行うための遺伝子工学実験用試薬、タンパク質精製用の試薬などの消耗品への使用を予定している。 成果発表ため、学会参加にかかる費用(旅費など)、また、英語論文校正費、別刷り代などを予定している。
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