L型Caチャネル(Cav1.2)とその変異体(Cav1.2ΔとCav1.2ΔCaM)の活性をパッチクランプ法で記録し、細胞内調節因子であるカルモジュリン(CaM)の作用機序を調べた。Cav1.2Δは、チャネルのC末端細胞内領域の約3分の2を欠いた変異体であるため、C末端遠位部にあるとされるPKAのリン酸化部位や脱リン酸化酵素の結合部位、自己抑制作用部位の影響を受けないと考えられる。Cav1.2ΔCaMは、Cav1.2Δにグリシン鎖を介してCaMを融合させた変異体である。 これまでの研究から、Caチャネルの活性制御にはCaMが不可欠であり、その効果を維持するためにATPが補助的な役割を持つことが判明した。ATPの作用は、チャネルC末端配列による抑制を緩和し、チャネル変異体においても活性維持に有効であった。また、野生型チャネルではオカダ酸がATPに代わる作用を示すことが判明したが、変異体ではオカダ酸による同様な効果は見られなかった。これらの結果から、脱リン酸化酵素によるリン酸化状態の制御がチャネルの活性に影響することが示唆された。 野生型チャネルは、Cell-freeの状態(inside-out mode)で2-3分以内に不活性化する(run-down現象)。Cav1.2ΔCaMでは不活性化しないため、チャネルからCaMが解離することが不活性化の原因であることが示唆された。本研究では、5分間以上不活性化状態にあるチャネルに再度CaMを付加しても活性が回復しないことを確認し、チャネルの不活性化からの回復に必要な因子を検討した。その結果、オカダ酸またはATP存在下で不活性化したチャネルでは、CaMを付加すると活性が回復することが判明した。よって、オカダ酸またはATPがチャネルとCaMの結合能を保つために有効であることが示唆された。
|