研究課題/領域番号 |
23790253
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
加藤 隆幸 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50343413)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ヒト好中球 / 自然免疫 / Toll-like receptor / G-CSF / STAT3 / ATP / P2Y / MAPK |
研究概要 |
白血球(好中球及び単球)には様々なTLRが発現し、自然免疫において重要な役割を果たしている。TLRを介する細胞活性化機構は多くの知見が得られているが、この機構を「正または負に制御する機構」についての研究は進んでいない。炎症や組織傷害を制御する観点から生理的因子による「負の制御機構」の解明は極めて重要である。申請者らは、生理的に重要な系としてG-CSF/STAT3による負の制御機構を明らかにしてきた。ATPもP2Y受容体を介して負の制御を示すことを見出している。293-hTLR4A-MD2-CD14細胞でのLPS刺激によるNF-κBの活性化を検出し、TLR4からのシグナル伝達を確認した。G-CSFによりSTAT3のみが特異的に活性化するG-CSFR/gp130キメラ受容体遺伝子をレンチウイルスベクターを用いてこの細胞に発現させ、安定発現株を樹立した。TNF-α及びIL-8遺伝子のプロモーター領域の下流にLuciferase遺伝子を配置したコンストラクトを作成し、上記細胞でのLPSによるLuciferase活性の誘導を検出した。各プロモーター領域の部分欠失コンストラクトを作成し、G-CSF、Dibutyryl cyclic AMPによる制御領域を検索中である。ヒト好中球及び単球において、G-CSFが、IL-10同様、LPS刺激によるTNF-α及びIL-8産生をJAK2/STAT3依存性に抑制することを申請者は明らかにしているが、その下流で生じる応答については不明のままである。G-CSFで刺激したヒト好中球を用いてクロスリンクと免疫沈降を行うことにより、リン酸化STAT3にいくつかの分子が結合することを最近見出している。本研究業績がヒト白血球(好中球及び単球)におけるG-CSF/STAT3及びATP/P2YによるTLRシグナルの負の制御機構の解明につながることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
293-hTLR4A-MD2-CD14細胞でのTLR4からのシグナル伝達(LPS刺激によるNF-κBの活性化)の確認が出来ている。G-CSFによりSTAT3のみが特異的に活性化するG-CSFR/gp130キメラ受容体遺伝子の安定発現株も樹立している。TNF-α及びIL-8遺伝子のプロモーター領域の下流にLuciferase遺伝子を配置したコンストラクトおよび各プロモーター領域の部分欠失コンストラクトを作成し、G-CSF、Dibutyryl cyclic AMPによる制御領域を検索中である。ヒト好中球及び単球において、G-CSFが、IL-10同様、LPS刺激によるTNF-α及びIL-8産生をJAK2/STAT3依存性に抑制するメカニズムの解明は、G-CSFで刺激したヒト好中球を用いてクロスリンクと免疫沈降を行うことにより、リン酸化STAT3にいくつかの分子が結合することを最近見出している。以上の理由から研究計画の進捗状況はおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
・ATPによるTLR4シグナルの「負の制御」に関与するpurinergic receptorの同定:ヒト好中球にはいくつかのpurinergic receptorが発現している。P2Y受容体では、P2Y2が最も強く発現しており、次にP2Y11が発現している。P2Y2及びP2Y11の機能的役割とそのクロストークを明らかにする。計画書(2)の系を用いてATPによる負の制御機構を解明する。ATPによる抗アポトーシス作用が、cAMP同様、Mcl-1とXIAPの安定化を介しているのか検証する・ヒト好中球におけるGM-CSF、IFN-α及びIFN-γによるTLR4シグナルの「正の制御」:GM-CSF、IFN-α及びIFN-γはLPS刺激によって誘導されるヒト好中球からのTNF-αの産生を強く増強する。ヒト好中球におけるこれらのサイトカインの「正の制御機構」を解析すると共に、293-hTLR4A-MD2-CD14細胞を用いてGM-CSF、IFN-α及びIFN-γによる増強作用並びにG-CSF及びATPによるその拮抗作用を解析する。GM-CSF、IFN-α及びIFN-γによる「正の制御機構」を解明すると共に、G-CSF及びATPによる「負の制御機構」とのクロストークを明らかにする。・サイトカインプロモーター活性制御に関与する分子の同定と解析:以上により同定したプロモーター制御領域に結合する転写因子を、i)好中球から調製したcDNAライブラリーを用いたyeast one hybrid system、ii)オリゴDNAカラムに結合する蛋白質の質量分析、により同定する。同定した転写因子の特異性をゲルシフトアッセイ法で確認する。同定した転写因子(または核内因子)の機能を、293-hTLR4A-MD2-CD14-G-CSFR/gp130細胞・好中球・単球を用いた手法により解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬類:タンパク質の発現システム及びタンパク質の精製と分析、各種抗体、各種阻害薬、遺伝子の解析、遺伝子の発現システム及びベクターの構築などに年間1,200千円必要。細胞培養類:牛胎児血清、試験管、培養皿などの購入に年間800千円必要。論文別刷:論文発表に年間100千円必要。国内旅費:研究成果の発表に年間200千円必要。謝金等:細胞培養、タンパク質の解析などの研究補助、その他経費に年間100千円必要。
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