研究課題/領域番号 |
23790254
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
照井 貴子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10366247)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 分子・細胞生理学 |
研究概要 |
本研究では、近年急速に発展している分子イメージング技術を駆使し、心臓の心筋線維の最小ユニットであるサルコメアの収縮動態をin vivoで高い時間・空間分解能でライブイメージングできる技術を開発することで、生体内の心筋収縮・弛緩をナノレベルで可視化し、心筋の収縮・弛緩の分子メカニズムの解明をねらう。 生命科学・医学研究において生体内の様々な制御メカニズムを解明するためには、in vitro のみならずin vivoでの分子メカニズムの解明が待たれるが、心筋研究においては、心臓自体が常に拍動し続けている臓器であるため、その技術的な難しさからin vivo研究はほとんど行われていない。 心筋の収縮・弛緩のメカニズムや心不全の病態メカニズムを明らかにするためには、特定の分子の動きを動物個体内で観察する必要がある。この考えに基づき、明るい蛍光(ローダミンの約1,000倍)を長時間(最大約1時間)発する量子ドット(Qdot)や蛍光色素、遺伝子組み換えウィルスベクターを用いて蛍光タンパク質を発現させることにより心筋サルコメアのイメージング(Z線イメージング)を高時間(~2 ms)・空間(~5 nm)分解能で行う。 当該年度では、in-vitroからin-vivoイメージングへ研究を進めていく上で、非常に重要なex-vivoイメージング装置を開発し、本研究をより実質的かつ装置系に段階性を持たせて進められる契機となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ex vivo心筋ナノイメージング技術の開発:心筋の収縮弛緩の分子メカニズムを明らかにするためには、特定の分子の動きを動物個体内で観察する必要がある。これまでに得られたナノイメージング技術を小動物(ラット、マウス)in vivoに応用し、生体内での心筋収縮・弛緩のメカニズムの解析を行う予定であるが、その前段階として、ラット摘出心を用いてランゲンドルフ還流下に顕微鏡観察ができるex-vivoイメージング装置を構築した。先述の量子ドットの他、心筋サルコメア、心筋のZ線/Z線付近に存在するタンパク質(αアクチニン)と蛍光タンパク質(EGFP)を融合させた遺伝子組換えウィルスベクターを用いて心筋サルコメアに蛍光タンパク質を発現させることにより、より鮮明に心筋サルコメアを蛍光顕微鏡で描出できると考えている。予備試験では、遺伝子組換えウィルスベクターを用いてラット心臓にαアクチニン-EGFPの発現が可能であることが確認できており、今後ex vivoイメージングへ応用していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
ex-vivoイメージング装置の改良・使途拡大:昨年度、ex-vivoイメージングでは、in-vivoイメージング、すなわち生きた個体ではコントロール困難なパラメータ(血中Ca2+濃度、ペーシングによる心拍数変調etc...)や、生体内に投与しては悪影響を来しうる蛍光物質などをex-vivoでイメージングすることで、新たな収縮・弛緩のメカニズムの解析が可能になると考えられる。また、in-vivoイメージングでは可能な限り顕微鏡観察困難となりうる因子(呼吸・血液など)を省いて観察できるため、心筋サルコメアに特化して観察することが可能である。よって、心筋の収縮・弛緩のメカニズム解明において、必要かつ重要な装置系と考え、改良および使途拡大を図りたいと考えている。 ex-vivoおよびin-vivoイメージング装置を用いて、生体内の心臓収縮期・拡張期におけるリアルタイムサルコメア動態の解明およびFrank-Starlingの心臓法則と筋長効果の相互関係の解明を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
生体内の心臓収縮期・拡張期におけるリアルタイムサルコメア動態の解明:1心拍の間、心臓がマイクロおよびナノレベルでどのように収縮・弛緩しているのか、心臓の収縮期・拡張期に心筋細胞(あるいはナノレベル)ではどのような挙動をとっているのか、現行の超音波検査や心臓CT・MRIにおいても空間分解能が低く、未だ詳細不明である。本研究では、in-vivoおよびex-vivoイメージング装置を用いて、心臓のリアルタイムサルコメアイメージングと心電図情報などを同一個体で融合して行うことにより、心筋細胞のナノレベルの収縮・弛緩動態を可視化できると考えている。Frank-Starling機構(in vivo)と筋長効果(in vitro):心臓の1回拍出量が心室拡張終期容積に比例するというFrank-Starlingの心臓法則は、心筋線維(in vitro)レベルにおいては心筋線維の発生張力が筋長とともに増大するという筋長効果に基づいている。申請者は、これまでにサルコメア再構築法などを駆使し筋長効果が細いフィラメントの協同性により影響を受けていることを解明してきたが、生体内のFrank-Starling機構とのin vivoでの直接的な関係は未だ不明である。In vivoで上述の心筋サルコメアイメージングを行うことにより得られるナノレベルのサルコメア情報と血行動態情報(圧-容積関係)を同一個体で組み合わせ、さらに様々な条件下(容量負荷、アドレナリン負荷、他薬剤投与下など)で解析を行うことにより、Frank-Starlingの心臓法則と筋長効果の相互関係を解明するほか、ナノレベルから個体レベルを通してFrank-Starlingの心臓法則の解明に迫る。これらの研究を進めるための部品および薬品などに研究費を使用する予定である。
|