研究課題
近年、体液浸透圧制御におけるグリア細胞の働きが注目されている。浸透圧受容器ではグリア細胞がニューロンの活動を制御する ことがわかってきた。これまでに、RNAiスクリーニングを行った結果、Prospero/Prox1転写因子のホモログであるCEH-26をコードする遺伝子のRNAiにより、高浸透圧忌避行動が顕著に低下することが明らかとなった。またグリア細胞マーカーの発現解析から、CEH-26がグリア細胞の分化に重要な役割を果たすことが明らかとなった。詳細な遺伝学的解析を行うため、ceh-26遺伝子ノックアウト線虫を作製したところ、ホモ致死となった。そこで、線虫においては未だ確立されていなかったコンディショナルノックアウト法の開発に着手した。具体的には、まず外来遺伝子を線虫ゲノムにシングルコピーで挿入する手法を開発し、同手法により当該遺伝子をLoxP配列で挟む構造のトランスジーンを導入した。このトランスジェニック線虫を既存の変異体と交配することで、種々のコンディショナルノックアウト線虫が作製できる。現在、ceh-26遺伝子ノックアウト線虫を作製中である。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度は、グリア細胞ーニューロン間の相互作用に関与する遺伝子群の同定を目的として研究を行った。研究計画に沿って、約1000遺伝子についてRNAiスクリーニングを行い、グリア細胞の発生、分化、機能維持に関与する遺伝子を複数個同定した。またceh-26遺伝子に関しては、高浸透圧忌避行動が顕著に低下することを明らかにし、グリア細胞ーニューロン間の相互作用に関与する可能性を見いだした。従って、研究は概ね順調 に進展していると評価した。
ceh-26遺伝子ノックアウト線虫を作製し、グリア細胞特異的、また時期特異的なノックアウトによる表現型解析を行う。またニューロン側で機能する分子を探索するため、ceh-26ノックアウト線虫の表現型を抑圧するような遺伝子変異(またはRNAi)のスクリーニングを行う。
線虫の培養に必要なプラスチック器具、変異体解析などに用いる薬剤やシーケンス試薬などの消耗品費が主に必要な経費である。
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