研究課題/領域番号 |
23790257
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
小川 泰弘 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (00531948)
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キーワード | 脳・神経 / シナプス / グリア細胞 / アストロサイト / イオンチャネル |
研究概要 |
近年ニューロンの情報のやり取りの場であるシナプスにおいてアストロサイトがその情報伝達に対し、積極的に影響を与えていることが明らかになってきた。そのため、in vivoにおいて標的とするアストロサイトの活動を制御することでアストロサイトがシナプスに対しどのような影響を与えるかを検討することは、実際の脳でのシナプス制御機構を解明するために非常に重要な知見を与える。本研究では、in vivoにおけるアストロサイトのシナプスに対する影響を、アストロサイトの活動を抑制的に制御することで解明することを目的としている。平成23年度はシナプス形成機構の解析のためのGFP融合PDS-95のアデノウイルス発現システム及び標的細胞からのmRNAを回収するためのGFP融合L10A発現システムを構築した。これに引き続き、平成24年度は、これらのシステムがin vivoにおいて使用可能であることを確認し、ニューロン―アストロサイト間でのシナプス制御機構を発生学的に解析した。さらに、本研究の目的であるアストロサイトの活動を生体にて抑制的に制御することを検討するために、非侵襲的な実験系の構築を目的として次のトランスジェニックマウスの作製を開始した。これは標的細胞のみを抑制的に制御するために薬物感受性Cl-イオンチャネルをCre-LoxPシステムを用いて特定細胞へ発現するもので、既に数系統においてトランスジーンの存在が確認できている。現在は、これらのトランスジェニックマウスのうち実験に使用可能なものの選択を推進して居る段階である。今後、これを用いてin vivoにおけるアストロサイトの長期的抑制を行いシナプスに対する影響を既に構築したアデノウイルスを用いて解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はin vivoにおいてアストロサイトの活動を制御し、実際の脳において標的ニューロンのシナプス形成や標的ニューロン及びアストロサイトのトランスクリプトーム解析を検討することを目的としている。平成23年度は、この目的を達成するためのツールを作製しこれが実験系として確立できるかを検討し実際にin vivoでの確認も完了している。平成24年度は、さらにこれらのツールを用いてin vivoにおいて発生学的に解析を進めた。次に、in vivoにおいてアストロサイトを抑制的に制御する薬物感受性イオンチャネルにおいては、現在これを組み込んだトランスジェニックマウスの作製が終わり、これより使用可能な動物の選考に入っている。以上より、本年度の研究達成度は概ね順調に進展しているか、やや先行して進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度において、既にin vivoでのシナプス形成の検討をし、発生学的な解析を完了している。また、トランスジェニックマウスの作製についても完了している。よって、平成25年度以降は、実際にin vivoにおいてアストロサイトの活動を抑制的に制御することを行う。具体的には、イベルメクチンによって制御可能なイオンチャネルをアストロサイトに発現させるトランスジェニックマウスに対し、既に構築したシナプス形成を検討するアデノウイルス発現ベクターを導入することで、標的ニューロンにおけるシナプス形成の形態的な観察を行う。さらに免疫沈降法を用いてNMDA及びAMA受容体などの局在比をウエスタンブロッティング法により検討する。これをイベルメクチンの投与により、アストロサイトの活動制御下において継時的に観察する。さらにトランスクリプトーム用の発現アデノウイルスをマウス胎仔脳ならびに成獣大脳皮質等に導入し、同様にイベルメクチンによる制御を行ったのち、標的ニューロン及びアストロサイトのmRNAを回収しマイクロアレイ等差次的解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ニューロン―グリア細胞共培養、アデノウイルスの調整のための培養ならびに精製、標的シナプスの免疫沈降とこれに含まれるタンパク質の解析のために、免疫沈降ビーズ及び抗体の購入と質量分析の受託解析、マイクロアレイ等の解析に平成25年度の研究費を使用する。
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