研究概要 |
線虫においてDMドメイン型転写因子MAB-3がGATA転写因子、ELT-2標的遺伝子の転写抑制を介して酸化ストレス耐性の性差に関与することをこれまでに見出した。MAB-3がELT-2の転写機能を抑制するかどうかを明らかにするため、これまでに同定したMAB-3およびELT-2の標的遺伝子のプロモーターに着目し、線虫ゲノムDNAよりmtl-1, mrp-5, F28A12.4各遺伝子のプロモーターを単離し、GFPをレポーター遺伝子とするレポータープラスミドを作成し、雄と雌雄同体それぞれの線虫内でのこれらの活性を観察したが、有意な性差は見られなかった。また、ストレス応答以外でのMAB-3の機能を調べた結果、mab-3変異体の雄は酸化ストレスに耐性を示す一方短寿命になることを見出した。 哺乳動物に保存されるDMRT遺伝子は7種類報告されている。これらの発現について体細胞レベルで性差がみられるかを、雌雄マウスの臓器における各DMRT遺伝子の発現をRT-PCRにより解析した。心臓ではDMRT1,2,3の発現がオスのみでみられる一方、肝臓等ではDMRT2の発現がメスで有意に増加していた。さらに、哺乳動物培養細胞株等を用いてDMRT遺伝子の発現を調べた。その一つ乳癌細胞株、MCF-7細胞はエストロゲン刺激を行うと細胞が増殖する。この時、エストロゲン刺激に伴いDMRT2の発現量が増加することをmRNAレベルおよびタンパク質レベルで見出した。続く解析によりDMRT2遺伝子を一過的に発現させたMCF-7細胞は増殖能が低下した一方、DMRT2遺伝子をノックダウンしたMCF-7細胞は増殖能が増大することを見出した。以上の結果から、乳癌細胞株においてDMRT2が発現するが、DMRT2自体はMCF-7細胞の増殖抑制に関与することを見出した。現在この成果について論文を準備中である。
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