• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

Dent病における近位尿細管細胞内H+輸送の役割‐Dent病の治療を目指して‐

研究課題

研究課題/領域番号 23790259
研究機関大阪医科大学

研究代表者

白岩 有桂  大阪医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20596605)

キーワードClC-5 / NPPB / エンドソーム
研究概要

1)ClC-5が存在する酸性小胞内と細胞質のpH勾配を調べCl-輸送との関係や,2)近位尿細管細胞のCa2+輸送についても調べることにより高カルシウム尿症の原因を明らかにすることは,尿管結石症やDent病の治療に役立つと考えられる.
そこで,ウシ蛙を用いてガラス管微小電極法により近位尿細管細胞内外のpHを測定し腎結石に関与する細胞内外の環境因子を明らかにすることとした.また,Cl-輸送が尿細管細胞内外のpHに与える影響を検討するため,チャネル阻害剤であるNPPBを用いた.同薬剤負荷により,細胞内pHは初期に上昇し後期には低下した.さらに5%炭酸ガスの負荷によりpHは微小な変化を繰り返し一定しなかったため,NPPBによりH+の酸性小胞内への取込みもしくは管腔側への分泌が影響を受ける可能性が示唆された.(2013年3月27日,第90回日本生理学会大会にて発表)
一方,管腔内液pHはNPPBを負荷するとpH 7.4から7.8まで変化し,薬剤投与終了後7.7で安定化した.加えて5%炭酸ガスを負荷すると管腔内pHは初期わずかに低下するが再度上昇してpH 7.8となったことから管腔側へのH+の分泌は促進されていない.これら一連の変化は,陰イオン輸送(Cl-及びHCO3-)が阻害されたために細胞内が一旦アルカリ性に傾きNa/H交換体が抑制された結果尿の酸性化が抑制され,同時に著名な利尿が引き起こされた考えられる.
以上よりNPPBによりCl-輸送を阻害すると細胞内外のpHが大きく変化することが示された.特に管腔内液の変化は劇的であり,容易にカルシウムの沈澱つまり腎結石や尿管結石を引き起こす可能性がある.ClC-5との直接的な関係は明らかにできなかったが,Cl-の変化がH+に影響を与えて腎結石を起こし得るということを組織レベルで表しており,臨床面でも大変意義深いと考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

近位尿細管細胞においてCl-がpHに大きく影響を与え結石を容易に発生し得る環境を作り出することが明らかになった.この環境内でのCa2+濃度の測定を急ぐ必要がある.また,現在ウシガエルで行っているイオン濃度の測定系を哺乳類でも確立し検討する必要がある.当初,ClC-5のE211を変異させたマウスを作製し測定を行う予定であったが,近年Claudin-14が腎結石に対して深く関与しているという報告がなされ(Y Gong et al., EMBO J. 2012),当研究室ではClaudin-14の蝸牛内電位発生に及ぼす影響についての研究のためにClaudin-14ノックアウトマウスを作製したことから,同マウスでの実験を行うこととした.野生型マウスとのClC-5の発現量の差を現在検討中である.

今後の研究の推進方策

上述のように近年Claudin-14と腎結石との関係について報告がなされたことから,この遺伝子が腎組織のイオン環境にどのような影響を与えているのかを検討する.Claudin-14遺伝子は腎では通常miRNAによって抑制されているが,高カルシウム食や高塩分食によりmiRNAによる抑制がなくなり,生成したClaudin-14はタイトジャンクションからのカルシウムの流入をブロックして尿中のカルシウム濃度を高めると言われている.このようなタイトジャンクションの変化は,Ca2+の傍細胞輸送だけでなくH+やCl-を始め各種イオン輸送にも変化をもたらす可能性がある.したがって,Claudin-14マウスにおいて近位尿細管細胞内外のpHやCa2+濃度を測定し,腎結石を作り出すイオン環境を明らかにする.

次年度の研究費の使用計画

E211A変異マウスの作成費に充てる予定であったが,Claudin-14ノックアウトマウスにおける測定系に変更したことから,未使用額は物品費に使用目的を変更する予定である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 食用蛙近位尿細管細胞内の水素イオン輸送に対するClC-5の役割2013

    • 著者名/発表者名
      白岩有桂, 大黒恵理子, 齊藤昌久, 山路純子, 窪田隆裕
    • 学会等名
      第90回日本生理学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船掘
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] モルモット蝸牛の内リンパ腔に面した細胞のカルシウム濃度は蝸牛内リンパ腔電位と蝸牛管上皮抵抗を調節する.2013

    • 著者名/発表者名
      長谷川恵子, 河田 了, 白岩有桂, 齊藤昌久, 大黒恵理子, 山路純子, 宮本 学, 窪田隆裕
    • 学会等名
      第90回日本生理学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船掘
    • 年月日
      20130327-20130329

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi