研究課題
活性酸素の生産に関与する鉄のトランスポーターであるミトフェリンは、カイコバキュロウィルス発現系によるタンパク質調製を試みたが、発現量が極めて少なく、精製やリポソームに再構成に用いることは出来なかった。一方、X線吸収スペクトルを用いて鉄の取り込み機能を評価する手法は昨年度のうちに確率していたが、その手法を利用して得られた結果の一部を含む論文がBiochemistryに受理された。活性酸素の消去に関与するセレンのトランスポーターであるセレノプロテインPは、昨年度に引き続き、ヒト血漿から精製して結晶化条件の検討を行った。プロテアーゼインヒビターを前処理段階で添加することにより異性体の混入を抑えることが可能となり、収量・純度を飛躍的に向上させることが出来た。得られた試料を用いて、結晶化条件のスクリーニングを行ったが、そのままの精製試料からでは結晶を得ることは出来なかった。セレノプロテインPには糖鎖が修飾していることが知られているが、ヒト血漿から精製を行なっているため、修飾糖鎖そのものが化学的に極めて不均一であったり、高い運動性を持っていることが結晶化しない要因の1つとして考えられた。そこで、酵素を用いてN結合型の糖鎖を切断し、結晶化条件のスクリーニングをさらに進めたところ、微結晶(10nm以下)ではあるが、タンパク質結晶を得ることに成功した。しかし、この結晶化条件による結晶化は再現性が極めて乏しく、シーディング法などを用いた場合においても、構造解析に適した大きさにまで成長することが無かった。ヒト血漿由来のセレノプロテインPにはN結合型のみではなく、O結合型の糖鎖が修飾している可能性もあり、さらに糖鎖を切断すること、また、糖鎖を切断した後の精製法を改良することにより、今後、構造解析が可能となる良質な結晶が得られることが期待される。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Biochemistry
巻: 51 ページ: 7901-7907
DOI:10.1021/bi3007884