胎仔の骨の石灰化のために重要な母子間ミネラル輸送路の候補としてTRPM6を同定することができた。TRPM6はマウス母子間ミネラル輸送に重要であるとされる胎盤内卵黄嚢に多く存在し、胎仔の骨の石灰化に合わせて発現が有意に増加した。また、ヒト胎盤絨毛上皮細胞由来の培養細胞において内在性のTRPM6様活性が観察された。さらにヒト胎盤絨毛上皮由来細胞からTRPM6 cDNAのクローニングを行った結果、予想に反して全く新しいエクソンがエクソン1aの上流約30kb付近に同定された。この新規バリアントから予想されるアミノ酸配列は、既知のTRPM6タンパク質と比べてN末端が126アミノ酸短いものであった。以上のことから、胎盤では新規プロモーターに駆動されてTRPM6のバリアントが発現しており、胎盤特異的な発現およびその調節が行われ、胎児の骨の石灰化のための母子間ミネラル輸送を制御しているものと推測された。
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