研究概要 |
膵臓β細胞におけるTRPM2活性化メカニズムを検討するためにいくつかのTRPM2ミュータントを作製した。インスリン分泌を刺激するホルモンの受容体の下流シグナルであるPKAのリン酸化部位として知られる配列RRXS/TのS/TをAに置換したミュータントを作製した(T9A, S11A, T25A, S38A, S187A, S225A, S1169A, S1176A)。また、TRPM2活性化物質であるADPRおよびcADPRの作用が消失すると報告されているミュータント(N1326D)を作製し、そのチャネル活性を検討した。その結果、熱刺激および過酸化水素刺激に応答しなかったため、機能的なチャネルの発現を確認できなかった。そこで、ADPRやcADPRの合成に関与するCD38をsiRNAによりノックダウンすることとし、遺伝子導入法を検討した。その結果、リポフェクション試薬を用いることにより導入効率を40%まで高めることに成功した。野生型マウスとTRPM2ノックアウトマウスに高脂肪食を摂餌させ、インスリン抵抗性モデルを作製し、その病態発症について比較検討した。その結果、TRPM2ノックアウトマウスは野生型マウスと比較して肥満を呈しにくいことが解った。糖代謝能について検討した結果、TRPM2ノックアウトマウスはインスリン抵抗性を発症していなかった。以上の結果からTRPM2がインスリン分泌のみならず、インスリン感受性の調節にも関与している可能性が示唆された。そこで、グルコース取り込みおよび貯蔵に強く関与する臓器(筋肉、膵臓、脂肪組織)におけるTRPM2の発現をRT-PCR法を用いて検討することにした。その結果、TRPM2は肝臓、脂肪組織にも発現していることが明らかとなった。
|