研究概要 |
本研究では,超高感度EM-CCDカメラとニポウディスク型共焦点ユニットなどからなる長期イメージング観察用のシステムを独自に構築して、超微弱光照射でのイメージング観察を可能とし,数日間の長期に渡り概日リズム中枢である視交叉上核の神経ネットワークの活動の高精度な計測を行った。研究では、アデノ随伴ウイルスを用い,蛍光カルシウムセンサーを視交叉上核の神経ネットワークに発現させる実験手法を確立し、視交叉上核に存在するほぼ全ての神経細胞から,概日カルシウムリズムを測定することに成功した(Enoki et al., J.Neurosci Methods, 2012)。また得られたイメージング計測データから,概日リズムを特徴づけるリズムパラメーター(位相、振幅、周期、最低値)を自動的に計測し,空間的に疑似カラー表示するプログラムを作成して,概日カルシウムリズムの時空間パターンを画像解析した。概日カルシウムリズムの視交叉上核内の領域間や細胞間の概日リズムの性質の違いを比較することで,視交叉上核には少なくとも背側と腹側に異なる領域振動体が存在し,これらの領域は普段は細胞間連絡をして同期していることが分った。神経活動をテトロドトキシン投与により阻害するとリズムは継続するが、これらの2つの振動体は次第に脱同調することが分った。対して、ギャップ結合阻害薬であるカルベノキソロンの投与は、個々の細胞のリズムおよびネットワークに効果がなかった。これらの結果は,視交叉上核の神経ネットワークは神経細胞の細胞間や領域間の相互連絡により,全体として正確で同調した概日リズムを刻むことを示している(Enoki et al., PNAS, 2012)
|