研究課題
四塩化炭素をラットに週2回8週間投与し、肝臓におけるTGFβ1, 2, 3 mRNAの発現量をリアルタイムPCRにより測定し、タンパク質の発現と局在を免疫組織化学により観察した。その結果、四塩化炭素投与によりTGFβ1, 3 mRNAの発現が誘導されることが明らかとなった。四塩化炭素投与前後でTGFβ2 mRNAの発現量に変化はなかった。四塩化炭素投与により、レチノールをエステル化する酵素であるレシチン:レチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)mRNAや、レチノイン酸分解酵素であるCYP26A1 mRNAの発現も上昇することが明らかとなった。さらに、免疫組織化学によりTGFβ3タンパク質は肝臓実質細胞の細胞質に存在すると考えられた。これらの結果は、四塩化炭素投与により肝臓内でのレチノイドの動態が変動することと、TGFβ3による細胞外マトリックスの合成誘導が起こることを示唆している。実際レポーターアッセイによりTGFβ3遺伝子のイントロンにレチノイン酸応答領域があることを明らかにした。 体内にビタミンAを大量に貯蔵していることが知られているヤツメウナギから、細胞内レチノール結合タンパク質(CRBP)のcDNAクローニングを行った。ヤツメウナギCRBPを大腸菌で大量発現・精製し、得られたタンパク質のレチノールおよびレチナールへの結合を調べたところ、ヤツメウナギCRBPはレチノールには強く結合するが、レチナールにはほとんど結合しないことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、活性化星細胞で増強したレチノイドシグナルが、星細胞におけるビタミンA 貯蔵を回復させるためのフィードバック調節機能を果たすのではないかと考え、その検証を行っているが、その過程で2報の原著論文を発表することができたため。
今後も引き続き「活性化星細胞で増強するレチノイドシグナルはビタミンA貯蔵を回復するためのフィードバック制御機能を持つ」可能性を検証する。 まずはじめに、レチノールをエステル化する酵素であるレシチン:レチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)の酵素活性を、レチノール(ROL)を単独で基質にした場合と細胞内レチノール結合タンパク質(CRBP)と複合体を形成させて基質にした場合とで、どの程度変動するのかを生化学的に確認する。 次に作業仮説において想定したフィードバックループの構成因子のいくつかに介入し、ループが破綻するかどうか確認する。具体的にはレチノイン酸受容体α(RARα)やCRBPのノックアウトマウスを用い、in vitroおよびin vivoで星細胞に活性化を誘導してレチノイドの量を定量し、野生型マウスの場合と比較する。
ラット肝臓星細胞をパーコール密度勾配遠心法により調製して培養し、分子生物学的・生化学的解析に供するための消耗品費を計上した。さらに、学会発表のための国内旅費、英文論文投稿のための英文校閲費と投稿料を計上した。次年度使用額の1,695円は端数として繰り越したものであり消耗品費に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
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