研究課題/領域番号 |
23790273
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
岡本 まり子 麻布大学, 獣医学部, 講師 (30415111)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | GPER |
研究概要 |
体内に病原微生物が侵入するとまず自然免疫系細胞が活性化され、貪食作用などにより病原体の分解を行うと同時にサイトカインを産生してリンパ球を活性化し病原体の排除を遂行する。病原体の排除が完了すると免疫反応を終息させる必要があり、免疫反応終息機構に関与する生体内因子の存在が知られている。女性ホルモンであるエストロゲンも抗炎症作用が知られており、自然免疫系細胞の活性化を制御して免疫反応を終息させている可能性が高いが、その詳細なメカニズムについてはほとんど知られていない。そこで、新たに細胞膜型エストロゲン受容体として同定したG蛋白共役型受容体GPR30/GPERに着目し、この新規受容体による免疫反応終息機構への関与について検討した。子宮頸癌細胞株にGPR30を発現させ刺激による炎症性サイトカイン遺伝子発現への影響についてプロモーターアッセイにより調べたところ、GPR30は発現量依存的にサイトカイン遺伝子のプロモーター活性を抑制した。また、従来の核内型エストロゲン受容体を発現せずGPR30のみを発現している乳癌細胞株をエストロゲンあるいはGPR30アゴニスト存在下で刺激するとサイトカイン産生の低下がみられた。この抑制にはG蛋白を介したシグナルが関与していることおよびGPR30の発現を低下させると抑制が抑えられることが明らかとなった。またGPR30を作製し解析したところ、GPR30は多くの蛋白修飾を受けておりシグナルの制御に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに得られた実験結果は、GPR30が炎症性サイトカインのプロモーター活性を抑制することで炎症性サイトカインの分泌を抑制している可能性を充分に示唆するものである。平成23年度から24年度にかけて「直接的な制御」について解析することを計画しており、その点では当初の目的をおおむね達成している。
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今後の研究の推進方策 |
自然免疫系細胞による炎症性サイトカイン産生制御へのGPR30の関与についてはまずGPR30の発現について調べる必要がある。タンパク発現解析が必要となるためGPR30抗体を作製し、外来性に発現させたGPR30については検出できることを確認したため詳細について検討していく。またsiRNA・アゴニストやキナーゼ阻害剤などを利用してサイトカイン産生抑制への影響について調べていくとともに細胞内関与因子についても同定していくことで直接的制御機構の解明を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は遺伝子工学、分子生物学、免疫学の手法を駆使して実験を遂行するため、それらに関する実験試薬・消耗品は必要不可欠である。DNA・RNA実験試薬(約300千円)、タンパク質解析試薬(約200千円)、細胞実験試薬(約200千円)、および実験に使用するプラスチック器具類(約300千円)の購入を計画している。
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