女性ホルモンであるエストロゲンには抗炎症作用が知られているが、自然免疫反応制御における詳細な分子機構は明らかではない。本研究では新たに細胞膜型エストロゲン受容体として同定されたGPR30/GPERが自然免疫応答制御に関与しているかどうかについて、主に炎症性サイトカインの産生制御に着目して検討を行った。 まずGPR30を介したシグナルがマクロファージなどの自然免疫系細胞からの炎症サイトカイン産生を抑制するかどうかという直接的な制御機構の有無について調べた。マクロファージ細胞株を使用しまず内在性GPR30の発現について確認した。マクロファージ細胞株では核内移行型エストロゲン受容体も発現しているため、GPR30特異的アゴニストを使用してマク ロファージ細胞株からの炎症性サイトカイン産生におけるGPR30シグナルの関与について検討を行ったところ、GPR30はLPS刺激によるマクロファージからのIL-6産生をmRNA及びタンパク質レベルで抑制した。しかしTNFalpha産生については影響を及ぼさなかった。この差異がどのような機構により生じるかについては現在のところ不明である。さらにGPR30は転写因子NF-kappaBによるプロモーター活性化を抑えることがわかった。さらにNF-kappaBシグナルに関わるキナーゼの活性化について調べたところ、2種類のキナーゼにおいてLPS刺激によるリン酸化をGPR30からのシグナルが抑制することが明らかとなった。また自然免疫応答にはNK細胞も関与していることよりNK細胞機能発揮におけるGPR30の制御の有無について検討を行ったところ、NK細胞の細胞障害活性化をGPR30アゴニスト投与により減少させる傾向が観察されたが有意な差は見られなかった。またGPR30シグナルはIL-8産生細胞においてもNF-kappaBシグナルを抑制することが明らかとなった。
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