研究概要 |
食品中のPOPs汚染濃度を明らかにするため、トータルダイエットスタディーにより食品の分析を行った。大阪府および京都府のスーパーマーケットから調査に使用する食品を購入した。その内容は、高脂肪含有食品を中心としたものであり、肉類、魚介類、油脂類、乳類(チーズ、牛乳)、野菜類、いも類である。今回、調査した食品群の中で、高濃度に検出されたのは肉類と魚介類であり、肉類の中で最も高濃度であったのがクジラ肉(Total POPs濃度として9600 pg/g湿重量)であった。次に、高濃度であった牛肉は、1500~1800 pg/g湿重量と豚や鶏肉と比較すると約6~18倍高濃度であった。一方、野菜類やいも類の汚染濃度は18~170 pg/g湿重量と低濃度であった。これらの結果より、各食品群のPOPsによる汚染実態が部分的に解明された。今後、さらに調査対象食品群を広げ、食品汚染の全容を解明していく予定である。 次に、POPsの内分泌攪乱作用の影響評価を行った。C57BL/6マウスに各POPs(2,3,7,8-TCDD、マイレックス、リンデン、クロルデン、ヘプタクロール、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、DDT、PFOS、クロルデコン、アルドリン、ディルドリン、エンドリン)を経口投与し、2日後の間薬物代謝酵素誘導能と精子数観察を行った。その結果、CYP1Aを基質とするEROD活性が2,3,7,8-TCDD投与群でコントロールマウスに比べて20倍上昇した。さらに、CYP2BのBROD活性ではマイレックスが2,3,7,8-TCDDよりも強く酵素誘導を引き起こすことが明らかとなった。一方、精子数観察ではHxCBzとクロルデコンを除くほとんどのPOPsで精子数減少が確認され、精子形成に影響を与えることが明らかとなった。今後、慢性的にPOPsを摂取させ次世代への影響評価を行う予定である。
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