研究課題/領域番号 |
23790283
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
渡部 美穂 群馬大学, 先端科学研究指導者育成ユニット, 助教 (10399321)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | GnRHニューロン / GABA / KCC2 / 性周期 / NKCC1 |
研究概要 |
生殖機能は視床下部-下垂体-性腺軸を中心とした複雑な神経内分泌機構により維持されており、視床下部に存在するGnRHニューロンは下垂体からの黄体形成ホルモン分泌を制御し、この軸の中心を担っている。GnRHニューロンが正常に機能することがいかに重要であるかは明らかであるが、GnRHニューロンの機能制御メカニズムは未だに十分に解明されていない。GnRHニューロンでは成熟動物においてもGABAが興奮性に作用しているという特有な性質に注目し、GnRHニューロンの機能制御におけるGABA興奮性入力の役割について明らかにするために、時期特異的可逆的にGnRHニューロンでGABA入力を興奮性から抑制性に操作することができる遺伝子改変マウスの作成を行った。テトラサイクリン遺伝子発現誘導系をマウス個体に応用し、GnRHニューロンでカリウムークロライド共役担体(KCC2)遺伝子の発現誘導およびナトリウムーカリウムークロライド共役担体(NKCC1)遺伝子の発現抑制を時期特異的可逆的に行うことができる2種類の遺伝子改変マウスを作出した。1つはGnRHニューロンでGABA入力を抑制性にする分子であるKCC2を発現誘導できるGnRH-tTA/KCC2-tetOマウスで、このマウスではドキシサイクリン投与中止から24時間後にはKCC2を発現誘導できること、ドキシサイクリン再投与72時間後には誘導前と同レベルに戻すことができることが確認できた。もう1つはGABA入力を興奮性にする分子であるNKCC1の発現をGnRHニューロンで時期特異的可逆的に抑制することができるGnRH-tTS/NKCC1-tetOマウスを作出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GnRHニューロンの機能制御におけるGABA興奮性作用の役割を個体レベルで明らかにするために、本年度の実施計画であったGnRHニューロンで時期特異的可逆的にGABA応答を興奮性から抑制性に操作することができる遺伝子改変マウスの作出することができた。GnRH遺伝子プロモーターの下流にtTA(テトラサイクリン制御性トランス活性化因子)およびtTS(テトラサイクリン制御性トランスサイレンサー)を挿入したBACトランスジェニックマウスを作出した(GnRH-tTAマウス(4ライン)、GnRH-tTSマウス(3ライン))。GnRH-tTAマウスとKCC2の翻訳開始部位直前にtetO配列をノックインしたKCC2-tetOマウスを交配させ得られるGnRH-tTA/KCC2-tetOマウスでは、ドキシサイクリン依存性にKCC2を発現誘導させることができた。また、GnRHニューロンでNKCC1遺伝子の発現を抑制するために、NKCC1の翻訳開始部位直前にtetO配列をノックインしたNKCC1-tetOマウスを作成し、GnRH-tTSマウスと交配させGnRH-tTS/NKCC1-tetOマウスを得た。このマウスではドキシサイクリン投与を中止するとtTSはtetO配列に結合し、下流のNKCC1遺伝子発現を抑制することができ、GnRHニューロンへのGABA入力を興奮性にすることができる。
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今後の研究の推進方策 |
GnRHニューロンの制御機構におけるGABA興奮性作用の役割を明らかにするために、作出したGnRHニューロンでGABA入力を抑制性に変化させたマウスを用いて、排卵前にドキシサイクリンの投与を中止し、GnRHニューロンでKCC2発現を誘導/NKCC1発現を抑制させ、GnRH/LH大量分泌およびパルス状分泌への影響をRIA法により調べる。排卵の有無や性周期の変化、交配や妊娠可能かどうか調べる。変化がみられた場合、ドキシサイクリンの再投与により、機能が回復することを確認する。また、GnRHニューロンに光活性化タンパク質チャネルロドプシン2を発現させた遺伝子改変マウスを作出し、光操作でGnRHニューロンの活動性を同期させ、GnRH/LH大量分泌やパルス状分泌、排卵を引き起こすことができるか検討する。GnRH-tTAマウスとチャネルロドプシン2-tetOマウスを交配させ、GnRHニューロン特異的にチャネルロドプシン2を発現させたマウスを作出する。視床下部内に青色LEDプローブを留置し、青色光照射によりGnRHニューロンを刺激し、GnRHニューロンの活動を光により操作する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子改変マウスの繁殖効率が悪く予定よりジェノタイピングが少なかったため、ジェノタイピングに必要な薬品費は次年度使用する。オプトジェネティクスに必要なLED光源、光ファイバーなどの光刺激システムを購入する。実験動物の購入や作成した遺伝子改変マウスの管理維持に使用する。in situ hybridizationに関する試薬、GnRH放出量を測定するRIA用試薬などの薬品を購入する。研究成果発表と情報収集を行うための学会や研究会に参加するために旅費を使用する。
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