研究課題/領域番号 |
23790284
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
福村 龍太郎 独立行政法人理化学研究所, 新規変異マウス研究開発チーム, 開発研究員 (90392240)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 亜鉛トランスポーター / ENU |
研究概要 |
亜鉛は、タンパク質の構造維持に必須であり、細胞内外のシグナル分子としても機能する。生体内での亜鉛ホメオスタシス維持に機能するZIPトランスポーターの1つであるSlc39a6遺伝子のMet541terナンセンス変異マウスは、雄のみにおいて生殖能力が著しく低下している。雄性生殖能力にどの様に寄与しているか、ENU Gene-Driven mutagenesisシステムを用いた複数の点突然変異遺伝子産物および変異マウスの解析から、メカニズムを検証した。Slc36a6遺伝子のエクソンを網羅する10組のPCRプライマーをデザインし、96プレート40枚、ENUマウス7512匹内に存在する点突然変異をHRM法で検出した。今年度は5組のPCRプライマーのスクリーニングが終了し、その結果、1つのアミノ酸置換(His106Arg)を発見した。これまでに発見したGlu510Gly、Met521Lys、 Tyr541terと合わせ、変異型遺伝子を発現ベクターに組み込み、変異型タンパク質の発現をタグ抗体にて確認した。Met541terナンセンス変異マウスの海馬構造の解析に関しては、野生型、Met541terナンセンスヘテロ型、Met541terナンセンスホモ型マウス、各遺伝型において、還流固定後、脳のパラフィン切片を作成し、HE染色、CV染色を行い、比較した結果、明確な差は見られなかった。精子運動解析装置による精子の運動能を調べた結果、明瞭な差を遺伝型間で観察することができなかった。さらに雄性生殖能力異常がSlc39a6遺伝子のナンセンス変異に依存しているかどうか、検証するため、次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析を用い、Met541terナンセンス変異マウスが有するENU変異を網羅的に解析した。その結果、Slc36a6遺伝子の近傍±3Mb内にアミノ酸置換を有する変異は見つからなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Slc36a6遺伝子のENU Gene-Driven mutagenesisシステムを用いた点突然変異スクリーニングにおいて、準備したPCRプライマー10組中5組が終了した。H23年度中にENU Gene-Driven mutagenesisに用いるゲノムDNAプレート40枚の再整備を行ったため、予定していた10組全てを実施するに至らなかった。変異型遺伝子発現ベクターを用いた培養細胞における実験はほぼ予定通り進んでいる。Met541terナンセンスホモ型マウスの解析に関しても、海馬構造や精子運動能において遺伝子型間で有意な差は観察されず、正常である事が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
残り5組のPCRプライマーを用いたSlc36a6遺伝子のENU Gene-Driven mutagenesisシステムを用いた点突然変異スクリーニングを行い、更なる点突然変異型遺伝子の発見、獲得に努める。 更なる変異が発見した場合、クローニングを行い、培養細胞実験による亜鉛輸送能テストを実施する。続いて培養細胞実験の結果を元にマウス個体復元を実施する点突然変異を決定し、個体化ならびに変異型Slc36a6遺伝子が雄マウスの妊性能に影響を与えるか検査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に持ち越した研究費382,686円は全て物品費に充て、点突然変異スクリーニングを行うための費用とする。 H24年度の物品費として計上した1,150千円は点突然変異スクリーニング、変異マウス個体復元費ならびに培養細胞実験、抗体、プラスミド精製キットなど分子生物学的実験に使用する消耗品に使用する予定である。旅費は国内学会に参加するための出張費用として計上した。
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