研究課題/領域番号 |
23790286
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西田 洋文 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80513043)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 心筋保護 / ミトコンドリア / ATP感受性K+チャネル / ポストコンディショニング / JAK/STAT / SAFE |
研究概要 |
虚血心筋保護においてミトコンドリア内膜に存在する二つのK+チャネルである、ATP感受性K+(mitoKATP)チャネルとCa2+活性化K+(mitoKCa)チャネルが重要とわれわれは報告してきた。本研究では,プレコンディショニングでは重要といわれているmitoKATPチャネルと、Survivor Activeting Factor Enhancement (SAFE)とも呼ばれポストコンディショニングで重要といわれるJAK/STATとの関連性に着目して、まずは細胞レベルであるフラボプロテイン自家蛍光法を用いて解析を行った。ウサギ心室筋細胞においてJAK阻害剤存在下でもmitoKATPチャネル開口剤diazoxideはJAK阻害剤非存在下と同様に自家蛍光し、mitoKATPチャネルは開口した。しかしJAKの活性化を促す薬物に暴露することでdiazoxide単独投与時に比してフラボプロテイン蛍光は有意に増強し、その効果はJAK阻害剤にて完全に消失し、diazoxide単独と同様のレベルにまで蛍光は低下した。同様のことを虚血心筋保護に関与するもう一つのK+チャネルであるmitoKCaチャネルでも行ったが、mitoKATPチャネルで認めたようなJAK活性化によるフラボプロテイン増強効果は認められなかった。以上の結果よりmitoKATPチャネルの開口に対してJAKの活性化は開口増強調節作用を有していることが示唆され、mitoKCaチャネルとJAK/STATのリンクは認められなかった。今後は心筋梗塞減少効果におけるJAKとmitoKATPの関連性を検討し、コネキシン43(Cx43)との関連にも細胞レベルであるミトコンドリア内カルシウム濃度にも着目して発展的に研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究室に新しい蛍光イメージング解析装置が導入され、この機器を用いるほうがデータ解析の面で有利な点が多いため、この機器を用いてもフラボプロテイン自家蛍光法が再現できるか否かに時間がかかってしまった。今後は再現可能なことが分かったことから細胞蛍光イメージの分野での実験スピードは上昇すると考える。また研究協力者1名の退職により虚血再灌流モデルによる心筋梗塞サイズ測定が著しく遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
虚血再灌流モデルにより、フラボプロテイン自家蛍光による細胞内での反応が臓器レベルにでも再現できるかを遂行する。それと並行してミトコンドリアカルシウム濃度に及ぼす影響も蛍光イメージングシステムを用いて遂行する。研究協力者1名の退職により遅れていた虚血再灌流による心筋梗塞モデルは、蛍光イメージングシステムが確立されたことにより、研究代表者1名のみでも充分に並行して行うことができると考えるが、念のため新たに技術職員1名の協力を得ることとした。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24 年度は前年度の結果を踏まえ、薬理学的ポストコンディショニングとミトコンドリアCa2+濃度の関連、およびウサギ心筋梗塞モデルを用いた心筋梗塞減少効果とその際に活性化されているキナーゼ系とmitoKATPチャネルおよびCx43との関連を検討する。(1) 虚血・再灌流モデルによる実験ポストコンディショニングによって心筋保護効果が生じるか否かを検討するため、ウサギのランゲンドルフ灌流心モデルを用いて30 分全虚血120 分再灌流後の心筋梗塞サイズを測定する。その際に種々の薬剤(mitoKATP開口剤はもちろん、JAK/STAT3 系のみならずRISKとよばれポストコンディショニングに重要なもう一つのキーであるPI3K/Akt 系を活性化する薬剤)を再灌流早期に投与し心筋梗塞減少効果を発揮するかを判定し、それらの効果がmitoKATP チャネル遮断薬(5-hydroxydacanoate)、JAK 阻害剤(AG490)、PI3K 抑制剤(LY294002)により消失するか否かを検討、またCx43 の抑制剤であるcarbenoxolone 投与による梗塞サイズ変化も検討する。(2) ミトコンドリアCa2+濃度の測定上記の心筋梗塞減少効果を発揮する薬剤がミトコンドリア内Ca2+過負荷を軽減するか否かを検討する。種々の薬物を投与することで、ミトコンドリア内Ca2+過負荷を惹起するウアバインを添加した際のミトコンドリア内Ca2+過負荷が軽減されるか否かを検討し、薬物が過負荷を軽減した場合、mitoKATP チャネル遮断薬やPI3K 抑制剤、またJAK阻害剤、そしてCx43抑制剤がその効果をブロックするか否かを検討する。
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