研究実績の概要 |
虚血心筋保護においてミトコンドリア内膜に存在するATP感受性K+(mitoKATP)チャネルとSurvivor Activating Factor Enhancement (SAFE) といわれるJAK/STAT系が重要な役割を担っているといわれている。本研究では,薬理学的ポストコンディショニングにおけるmitoKATPチャネルとJAK/STAT系のクロストークに関してまずはウサギ心筋梗塞モデルを用いて検討した。JAK/STAT系を活性化することがしられているIL6(10 ng/ml)を、虚血後10分間作用させると有意な梗塞サイズ減少効果が認められた。STAT3阻害剤であるSTATTIC(20 μM) の存在下ではIL6の梗塞サイズ減少効果は抑制された。一方mitoKATPチャネル遮断薬の5-hydroxydecanoate (5HD, 500 μM)存在下でも梗塞サイズ減少効果が抑制された。以上の結果を踏まえてmitoKATPチャネル開口とSTAT3活性化が独立して心筋保護効果を発揮するのかクロストークして発揮しているのか確認するため、STAT3阻害剤存在下でのmitoKATPチャネル活性化の間接的な指標であるフラボプロテイン自家蛍光反応を測定した。代表的なmitoKATPチャネル開口剤であるDiazoxide (100 μM)存在下でIL6を作用させるとフラボプロテイン蛍光は有意に増強した。対して、mitoKATPチャネル遮断薬である5HD存在下でIL6を作用させるとフラボプロテイン酸化反応は完全に認められなくなった。一方、STAT3阻害剤であるSTATTIC存在下で同様の検討を行ったところ、IL6のDIAZに対するフラボプロテイン酸化反応増強効果は抑制された。以上の結果よりmitoKATPチャネルの開口とJAK/STAT系の活性化はクロストーク、おそらくJAK/STAT系の下流でmitoKATPチャネルがeffectorとして働き、虚血再灌流障害に対して心筋保護メカニズムを発揮していることが示唆された。
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