研究課題/領域番号 |
23790288
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
神吉 昭子 信州大学, 医学系研究科, 助教 (10397309)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生理活性物質 / メタボリックシンドローム |
研究概要 |
アドレノメデュリン(AM)は、血管拡張作用をはじめ、抗酸化作用、抗炎症作用、抗動脈硬化作用など多彩な生理活性を有する内因性ペプチドとして注目されている。近年、動脈硬化および心血管疾患発症の原因としてメタボリックシンドロームが注目されているが、メタボリックシンドロームの発症や病態におけるAMの意義は明らかでない。本研究では、AM-RAMP2システムによる肝臓脂質代謝制御と、メタボリックシンドロームにおける意義を解明し、新たな治療法開発への展開をはかることを目的とした。 平成23年度は、AMの受容体活性調節タンパクであるRAMP2ヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/-)を用いて、高脂肪食(脂肪含量32%)投与による肥満誘発モデルを作成した。RAMP2+/-は、野生型マウスと比較して、白色脂肪細胞の肥大と白色脂肪組織への炎症細胞浸潤の亢進が見られ、褐色脂肪細胞における脂肪蓄積が増加していた。さらに、RAMP2+/-は野生型マウスと比較して、インスリン抵抗性を示し、血中アディポネクチンの低下とレプチンの上昇を示した。またRAMP2+/-において、肝臓の炎症性サイトカインの増加と脂肪肝の増悪が観察された。以上の結果より、AM-RAMP2システムが、肝臓の脂質代謝制御とメタボリックシンドロームの発症に関与している可能性が示唆された。さらに詳細なメカニズムを解明することで、AM-RAMP2システムが治療法の有用な標的となるか明らかになると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RAMP2ヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/-)を用いて、高脂肪食投与による肥満誘発モデルの解析を行った。RAMP2+/-は、野生型マウスと比較して、体重が増加し、インスリン抵抗性を示した。また、白色脂肪細胞の肥大と白色脂肪組織への炎症細胞浸潤の亢進が見られ、褐色脂肪細胞では脂肪蓄積が増加していた。さらに、RAMP2+/-は野生型マウスと比較して、脂肪肝の増悪が見られた。以上の結果より、AM-RAMP2システムが、肝臓の脂質代謝制御とメタボリックシンドロームの発症に関与することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、RAMP2+/-の高脂肪食投与実験の解析をさらに進めるとともに、脂肪細胞特異的aP2CreマウスとRAMP2floxedマウスを交配し、脂肪細胞特異的RAMP2ノックアウトマウスを新たに作成して、AM-RAMP2システムの脂肪細胞特異的な生理作用について解析を行う。普通食投与時の脂肪細胞特異的RAMP2ノックアウトマウスの表現型と機能解析を行い、さらに高脂肪食投与での変化についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
新たに作成する脂肪細胞特異的RAMP2ノックアウトマウスの飼育管理費、餌購入費に使用する。作成した脂肪細胞特異的RAMP2ノックアウトマウスの表現型および病態学的解析を行うための試薬、抗体、消耗品の購入に使用する。また、分子生物学的解析および細胞生物学的解析を行うための試薬、細胞培養液、ディッシュなどの消耗品の購入に使用する。加えて、本研究課題で得られた研究成果を学会で発表するための旅費として使用する。
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