フラボノイドは天然に存在する機能性成分で抗アレルギー作用、抗炎症作用、抗酸化作用など様々な作用を有しているが、分子レベルでの詳細な作用機序については明らかにされていない。本研究の目的は、フラボノイドの多彩な細胞保護作用の発揮には細胞に共通した分子機構の阻害により発揮されると考え、フラボノイドによる細胞膜の機能的・構造的変化を解析し、フラボノイドの作用機序を解明することである。 平成23年度では肥満細胞を中心にケルセチンの細胞膜で起こる作用機序としてcaveolin-1およびPLDが抗アレルギー作用を示すためのheme oxygenase (HO)-1の誘導に必要であることを明らかにした。平成24年度ではフラボノイドの持つ抗アレルギー作用以外の細胞保護作用について活性酸素による細胞傷害に対するフラボノイドの保護作用にcaveolin-1、PLDが関与するかについて肺胞上皮細胞を用いてin vitroの系で検討した。具体的にはまずケルセチンが活性酸素による細胞傷害を抑制することを確認した。また、ケルセチンは肺胞上皮細胞でHO-1を誘導し、HO-1の誘導に重要な転写因子nuclear factor-erythroid 2 related factor 2 (Nrf2)を核へ移行させることを確認した。ケルセチンは平成23年度に確認したように肺胞上皮細胞でもcaveolin-1の発現を減少させることが明らかとなった。さらに、caveolin-1とNrf2の相互作用を免疫沈降により確認し、ケルセチンはcaveolin-1、Nrf2の結合を調節していることが明らかとなった。以上の結果より、ケルセチンは細胞膜、なかでもcaveolin-1への作用を通してHO-1を誘導し、細胞保護作用を示す可能性が示された。
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