エクソソームは生体内の様々な細胞種や癌細胞などから放出される50nm~100nmの微小膜小胞であり、様々な機能性タンパク質やRNAなどを積み荷として含んでいる。放出されたエクソソームは、液性因子として生体内を循環・拡散し、エクソソームに含まれる積み荷がターゲット細胞に作用することにより、様々な生理・病理的応答を引き起こすことが知られている。エクソソームは後期エンドソーム膜が内腔側に陥入することで形成され、この多胞エンドソームが細胞膜と融合することで細胞外環境に放出される。この後期エンドソーム膜の陥入の際に、様々な機能性タンパク質やRNAがエクソソーム内に積み荷としてソーティングされるが、積み荷ソーティングの具体的なメカニズムについては全く明らかになっていなかった。 平成25年度は、後期エンドソーム膜上でのエクソソームへの積み荷ソーティング機構におけるスフィンゴシンキナーゼシグナロソームの生理的意義の解明を行った。結果、以下の2点が明らかになった。1)スフィンゴシンキナーゼ2(SphK2)によるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)の産生およびそれに続くGタンパク質共役型受容体であるS1P受容体の自己分泌様の活性化システムが、細胞内膜系の後期エンドソーム膜上においても形質膜とは独立して働いている。2)後期エンドソームま膜上でのS1P受容体の恒常的な活性化が、積み荷タンパク質のエクソソームへのソーティングのトリガーとなる。 これらの結果は、積み荷タンパク質のエクソソームへのソーティングがスフィンゴシンキナーゼシグナロソームの制御により自在にコントロール可能であることを示唆しており、エクソソームが関与する各種疾患の創薬ターゲットとして期待される。
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