最近、動脈硬化モデルにおいて血管のhypoxia-inducible factor-1α (HIF-1α) の活性化が炎症性細胞の集積、血管平滑筋細胞の増殖・遊走、プラークの成長に関与することが示唆されている。本研究は、血管リモデリングにおけるHIF-1αの機能解析及び病態生理学的意義を検討し、HIF-1αを標的とした新しい動脈硬化治療法の開発に向けた基盤研究を行うことを目的とする。研究代表者らは、平滑筋細胞特異的に発現しているSM22を標的としてCre-loxPシステムにより、HIF-1α (flox/flox) SM22-Cre TG (+/-) マウス (SMKO) 及びHIF-1α (wild/wild) SM22-Cre TG (+/-) マウス (CONT) を作成した。 CONTにおいてアンジオテンシンII (Ang II) 4週間持続皮下投与により収縮期血圧は有意に上昇したが、SMKOでは有意な抑制が認められた。CONTで認められたAng IIによる血管周囲の繊維化が、平滑筋特異的HIF-1α遺伝子欠損により抑制されたことから、細胞外マトリックス代謝および組織繊維化に関連する遺伝子のmRNA発現変動について解析を行った。細胞外マトリックスの構成成分であるfibronectinおよびcollagen 1A1のmRNA発現は、CONTにおいてAng IIにより有意に上昇し、SMKOでは有意に抑制された。さらに動脈硬化は炎症を伴う疾患であり、マクロファージの血管壁内への取り込みにより病態が進行することが知られている。炎症性サイトカインであるIL-1βおよび単球走化性因子であるMCP-1のmRNA発現は、CONTにおいてAng IIにより有意に上昇し、SMKOでは有意に抑制された。
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