研究概要 |
糖尿病モデルとしてstreptozotocin(STZ: 10 mg/kg/day、一週間連続投与)により誘導した1型糖尿病モデルと、2型糖尿病自然発症モデルであるOLETFラットを用いた。STZモデルでは正常およびp21-KOマウスを用い、STZ投与開始2、4、12、24週後に、OLETFラットでは10、16、22、28、55週齢において、それぞれ腎細胞老化と炎症を評価した。腎細胞老化の評価は、老化関連ガラクトシダーゼ(SA-βGal)染色の増強ならびにp53およびp21の腎内mRNA発現の増強により行った。炎症の評価は、CD68+(マクロファージ)の免疫染色ならびにICAM-1, TNF-α, IFN-γ, IL-4, IL-6, IL-10, IL-17および TGF-βなどのmRNA発現測定を行った。細胞老化と炎症の評価は連続切片上で行い、同一ネフロンにおいて検討できるようにした。1型2型の糖尿病ではともに腎内マクロファージの浸潤が進んでおり、これは老化細胞の出現とほぼ同期するものであった。老化細胞および炎症の出現直前にIL-10の増大が見られ、出現時にTNF-αの上昇が確認できた。これらの変化はp21-KOマウスでは確認できなかった。また、腎細胞老化の原因探索を目的として、糖尿病p21-KOおよびwild-typeマウスに対してインスリンを処置し、高血糖の関与について調べた。糖尿病マウスにおいてインスリンは血糖値是正の度合いに応じて、腎老化を軽減させることができた。続いて、炎症を生じたネフロンを可視化する目的で、GFP transgenicマウスより単球を分離し、recipientマウスに養子細胞移植を行ったが、γ線照射を行っていないマウスでは、移植細胞のほとんどが肺で捕捉されてしまい、顕微鏡下にて接着浸潤を確認するまでには至っていない。
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