研究概要 |
Tsumura Suzuki Obese Diabetes (TSOD) マウスはddY系マウスのうち肥満と尿糖を呈する個体同士を交配することで近交系化された自然発症型2型糖尿病モデル動物である。我々は最近、TSODマウスの心機能について評価したが、予想に反して心機能の低下や心臓病理所見の異常は認められなかった (Kawada et al., Biol. Pharm. Bull., 33: 998-1003, 2010)。このことから、TSODマウスの心筋は糖尿病に対して抵抗性を示すと考えている。そこで本研究では、TSODマウスの心筋におけるオートファジー活性について解析し、TSODマウスの有する内因性の心筋保護機能におけるオートファジーの関与について評価した。その結果、TSODマウスの心筋組織ではオートファジー関連タンパクであるAtg12-Atg5結合体の発現量が、TSNOマウスに比べて明らかに増加していた。また、免疫組織学的染色法による解析の結果、TSODマウスの左心室壁ではオートファゴソーム膜タンパクであるLC3が心筋細胞の核周辺に多数集積しており、その多くはリソソーム膜タンパクであるLAMP-1と共発現していたが、TSNOマウスの心筋細胞ではLC3の集積はわずかであった。電子顕微鏡により微細構造を解析した結果、TSODマウスの左心室筋では多数のオートリソソームが確認された。これらのことから、TSODマウスの心筋ではオートファジー-リソソーム経路が活性化しており、糖尿病により心筋細胞内に蓄積した不完全タンパクなどを積極的に分解・除去するため、心筋細胞死に至らないと考えられる。
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