研究課題
本研究の目的は、がん患者の疼痛病態時におけるTRPC3チャネルの機能を解明し、さらに近年開発されたTRPC3阻害薬pyrazole-3を新規鎮痛薬として臨床応用へ繋げるための基盤データを蓄積することである。平成23年度は、抗がん剤治療により発症するしびれ、痛みなどをはじめとする末梢神経障害に着目し、抗がん剤carboplatin投与による痛覚異常モデル動物を作製した。平成24年度は、前年度に作製したモデル動物を用いて、痛覚異常病態時におけるTRPC3の発現変化とpyrazole-3の効果について解析した。その結果、control群、並びに抗がん剤carboplatin(雄性C57BLマウスに10 mg/kg/回で週2回、合計4回腹腔内投与)群の脊髄および脊髄後根神経節において、TRPC3発現量に変化は認められなかった。したがって、carboplatin投与による痛覚異常の発症にTRPC3発現量は関与しないことが示唆された。次に、pyrazole-3の鎮痛効果を評価したところ、control群ではpyrazole-3(30 mg/kg)腹腔内投与により鎮痛効果が認められなかったが、carboplatin投与群ではmechanical allodynia(通常痛みを感じない機械刺激に対して痛いと感じる症状)、並びにcold hyperalgesia(冷刺激に対して過敏になる症状)を有意に改善した。以上の結果より、TRPC3阻害薬pyrazole-3は、健常状態の痛覚に影響を与えないが、carboplatin治療により感受性が亢進した痛覚に対して鎮痛作用を発揮し、mechanical allodyniaやcold hyperalgesiaを抑制することが示唆された。
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Anesthesiology
巻: 117 ページ: 847-56
Curr Pharm Des
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