研究課題/領域番号 |
23790317
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤倉 大輔 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 博士研究員 (70547794)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | DR6 / T細胞 / B細胞 |
研究概要 |
新規のリンパ細胞活性化制御因子であるDR6は末梢T・B細胞膜上に発現し、これら細胞の活性化・増殖制御に関与することが明らかにされているが、その刺激因子(DR6リガンド)を含め、詳細な制御機構は明らかとされていない。代表者はDR6の細胞内領域に結合する新規タンパク質を同定し、細胞死制御に置ける機能解析結果を国際学術雑誌にて公表した。次に、DR6とヒトCD40 (hCD40)のキメラタンパク質を用いたレセプタークロスリンク法により、DR6刺激時に誘導される細胞内シグナル伝達系の解析を行った。マウスT細胞由来培養細胞株であるDO11.10-T細胞にhCD40-DR6キメラタンパク質を発現させ、抗hCD40抗体によるクロスリンクを行ったところ、NFkBおよびp38経路の活性化が認められた。また、TCR刺激により誘導されるIL2の産生はhCD40-DR6クロスリンクにより時間的な制御を受けた事から、T細胞の活性化時において、DR6クロスリンクはNFkBやp38経路を介してIL2の産生を制御する可能性が示唆された。一方、免疫系における内因性のDR6リガンドはこれまでに明らかにされていないが、代表者はリコンビナントDR6をプローブとしたflowcytometry解析から、DR6リガンドがマウス脾臓内のレアなポピュレーションに発現することを見いだした。また、種々の培養細胞株を対象とした同様の解析から、DR6プローブが特異的に結合する細胞株を見いだし、full length cDNAライブラリーを構築し、発現クローニングを行った。これまでに膜タンパク質を含む候補遺伝子の単離に成功しており、これら候補因子のリコンビナントタンパク質の作製および上記のhCD40-DR6クロスリンク解析、flowcytometry解析により見いだされた表現系との比較を行うことにより機能的な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はDR6リガンド候補因子の単離およびその分子レベルでの機能解析を目指した。これまでにfull length cDNAライブラリーを用いた発現クローニングによる候補因子の単離に成功しており、候補因子のリコンビナントタンパク質の作製および機能の解析を進めている。また、これまで特異的リガンドが同定されていないため、DR6刺激により活性化される細胞内シグナル経路およびこれにより影響を受ける免疫細胞の表現系についての詳細は不明であったが、hCD40-DR6キメラタンパク質を用いた解析からこれらの詳細を明らかにする事ができた。更に、次年度の施行を予定していたマウス個体内におけるDR6リガンドの発現分布の解析については、DR6プローブを用いる事により前倒しして明らかにする事ができた。上記の検討により本年度に明らかとされたDR6リガンドにより誘導されるシグナル伝達経路・これにより影響を受ける免疫細胞イベント・発現分布に関する情報を元にDR6リガンド候補因子の機能解析を進めて行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当初の計画通り概ね順調に進行している。次年度初頭は細胞培養系においてDR6リガンド候補因子とDR6の分子レベルでの解析を行う。また、平行してマウス個体内より単離したDR6およびリガンド候補因子を発現する細胞を単離し、免疫細胞間の制御機構に焦点を当てて機能解析を行う。単離された候補因子は自己免疫疾患の発症に関与する可能性が報告されている事から、上記により得られる知見を踏まえて、これら疾患の発症における機能解析を進めて行く。また、機能タンパク質や中和抗体を作製し、疾患治療への可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策に示した通り、次年度はマウス個体内での解析が主となり、特に正常マウス個体内におけるDR6リガンド候補因子の発現はレアなポピュレーションであるため、これの単離・機能解析に必要な抗体・試薬類および疾患モデルマウスの購入・飼育費等が必要となることが予測される。このため、本年度に経費の節減・効率的な運用を目指した結果発生した使用残についてはこれらの購入費に充当する。
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