これまでのDR6遺伝子欠損マウスの解析報告から、末梢T細胞活性化に対して抑制的に働くと目されるDR6の役割を明らかにすることを目的として、未だ明らかにされていない免疫系におけるDR6特異的刺激因子の同定および機能解析を開始した。前年度までの検討により見出された候補因子のDR6への機能的依存性および特異性についての検討を行った。まず、候補因子の可溶性リコンビナントタンパク質を作製し、T細胞受容体刺激依存性T細胞活性化に対する上記リコンビナントタンパク質添加の影響を観察したところ、細胞膜発現時と同様にT細胞の活性化を抑制する事を見出した。また、DR6ノックダウンを用いた検討により、候補因子の抑制能はT細胞上のDR6発現に依存的であることが示された。次に、候補因子と種々のTNF受容体ファミリー分子との結合性をDR6と比較したところ、候補因子との結合はDR6を用いた検討においてのみ検出された。また、候補因子とDR6の部分欠損変異体を用いた結合試験により、それぞれの細胞外領域における結合責任領域が特定された。以上の検討により、候補因子のDR6への特異性・依存性が結合性および機能において示された事から、単離された候補因子をDR6Lとした。次に、DR6LとDR6の結合によりもたらされる機能の、個体内における免疫制御への関与を明らかにする事を目的として、免疫活性化マウスにおけるDR6LおよびDR6の発現細胞分布の解析を行った。興味深い事に、平常時マウスにおけるDR6発現細胞は脾臓においてわずかに検出されたのに対し、免疫活性化時の個体ではDR6発現細胞の存在率が有為に増加する事が確認された。一方、細胞膜上DR6L発現はマウスの遺伝背景に依存することが確認された。以上の結果から、DR6LおよびDR6の結合が免疫制御の標的となる可能性が示唆された。
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