研究課題/領域番号 |
23790321
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 恭丈 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40397914)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | エピゲノム制御 / プロテオミクス解析 / S-アデノシルメチオニン / メチオニンアデノシル転移酵素 / メチル基転移酵素 |
研究概要 |
メチオニン・アデノシル転移酵素II(MATII)は、触媒サブユニット(α)と機能不明な非触媒サブユニット(β)から構成され、S-アデノシルメチオニン(SAM)の生合成を触媒する。合成されたSAMはメチル基転移酵素(MT)の基質として利用され、そのメチル基はDNA中のシトシンやヒストンのリジン残基などへ転移され、クロマチンレベルでのエピジェネティクスを支配する。本研究の主題は、クロマチン制御において、機能的に未知であるMATII非触媒サブユニット(MATIIβ)の構造とその作用機構を理解することである。平成23年度では、MATIIβの構造および機能解析に焦点をあてて、研究を遂行した。まず、ヒトのMATIIβの構造が、研究開始直後にプロテインデータバンク(PDB)に報告された (ID番号:2YDXおよび2YDY)のを受け、マウスの場合も同様であると考えた。その構造の特徴には「Rossmann fold」構造があり、当初、新規メチル基転移酵素の可能性が示唆されていた。しかし、報告された構造解析結果では、基質となる分子がS-アデノシルメチオニン(SAM)ではなく、ニコチンアミドリン酸(NADP)であった。一方で、MATIIβの機能は、世界的に行われておらず、私はMATIIβの細胞内分布を調べることにした。その結果、MATIIβはマウス由来の細胞において、有意に細胞核に局在すること、また、MATIIαと共発現させると、MATIIαおよびMATIIβが細胞核に共局在化することを明らかにした。そこで、細胞核内のMATIIβ複合体を精製し、その構成因子の同定をおこなった。その結果、346もの候補因子が同定された。現在、これらの因子のうち、転写制御やクロマチン制御3に関与する因子群(モジュール)の分類をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに研究が遂行できている。まず、MATIIβの構造はヒトが報告されたのを受け、マウスでの予測と特徴の把握が容易になった。一方で、MATIIβの機能は、予想以上の成果が得られた。MATIIβが単独で細胞核に分布し、MATIIαの核内移行へ関与する可能性が得られた。このことから、細胞核内でのMATIIβ複合体を構成する因子の意義も見いだし易くなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、細胞核内でのMATIIβ複合体から、MATIIαとの相互作用や核内移行に必要な因子の同定や、エピゲノム制御におけるメチル基転移酵素との共役機構を調べる。特に、MATIIαの酵素活性に及ぼす影響を、MATIIβをノックダウンした細胞によるMATIIα複合体の解析や、MATIIβがMATIIα-メチル基転移酵素に及ぼす影響を、ヒストンのメチル化修飾により評価する。さらに、これまでに見いだしたMATIIの標的遺伝子の制御にMATIIβがどのように寄与するかを、クロマチン免疫沈降実験などから解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は当初の予定通り、平成24年度請求額とともに、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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