メチオニン・アデノシル転移酵素II(MATII)は、触媒サブユニット(α)と機能不明な非触媒サブユニット(β)から構成され、S-アデノシルメチオニン(SAM)の生合成を触媒する。合成されたSAMはメチル基転移酵素(MT)の基質として利用され、そのメチル基はDNA中のシトシンやヒストンのリジン残基などへ転移され、クロマチンレベルでのエピジェネティクスを支配する。本研究の主題は、クロマチン制御において、機能的に未知であるMATII非触媒サブユニット(MATIIβ)の構造とその作用機構を理解することである。平成24年度では、MATIIβの機能解析に焦点をあてて、研究を遂行した。まず、MATIIβの細胞内分布を調べたところ、MATIIβはマウス由来の細胞において、有意に細胞核に局在すること、また、MATIIαと共発現させると、MATIIαおよびMATIIβが細胞核に共局在化することを明らかにした。そこで、蛍光タンパク質再構成法(bimolecular fluorescent complementation: BiFC法)を用いて、細胞核内のMATIIαおよびMATIIβの二量体を、生細胞下で観察した。そして、この二量体に酸化ストレス誘導剤の処理をおこなうと、一時的に二量体の形成が解消されることを見出した。現在、平成23年度からの研究成果も盛り込んで、学術誌に投稿準備中である。一方で、MATII複合体の解析もすすめて、転写制御やクロマチン制御に関連する因子群をとりまとめ、学術誌に報告することができた。
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