免疫応答において活性化B細胞は、抗原をその種類に合わせて効果的に排除するため、初期設定のIgM抗体からIgGなどの他のアイソタイプ抗体へクラスを変換(スイッチ)する。B細胞がクラススイッチを実行するための遺伝子調節ネットワークの確立には、転写因子Bach2が必須であることを示した。しかし、この遺伝子ネットワークの状態を規定するBach2の活性を制御する機構は不明である。一方で、Bach2蛋白質がユビキチン化修飾され、分解されること及び、ユビキチンのE3リガーゼの基質認識アダプター候補を同定している。本研究では、Bach2のユビキチン化修飾によりB細胞の活性化応答が制御される可能性を検討することを目的とした。 平成23年度の実施したBach2のユビキチン化修飾を調節すると推定されるE3リガーゼの基質認識アダプター候補であるMIPPとKlhl9のBach2ユビキチン化における役割をリコンビナント蛋白質などを用いた試験管内再構成系を用いて検討したところ、ユビキチン化修飾による調節を支持する結果は得られなかった。そこで、マウスB細胞株から抽出したBach2蛋白質を質量分析(MS)解析したところ、リン酸化修飾を受けていることを突き止めた。B細胞は細胞膜型の抗体を中心としたB細胞受容体(BCR)からのシグナルが、伝達されて活性化する。そこで、Bach2のリン酸化がどのシグナル経路に依存するのかを検討したところ、PI3Kシグナル経路の下流でBach2がリン酸化修飾を受けることがわかった。さらにMS解析の結果に基づいてリン酸化修飾を受けるアミノ酸を同定したのち、アミノ酸置換変異型のBach2を用いた解析をおこない、Bach2のリン酸化状態に大きな影響を与えるアミノ酸を同定できた。現在、リン酸化とユビキチン化修飾の関係を検討中である。
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