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2011 年度 実施状況報告書

リゾリン脂質アシル転移酵素ファミリーの機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 23790324
研究機関東京大学

研究代表者

進藤 英雄  東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10401027)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード脂質 / 生理活性 / アレルギー・ぜんそく
研究概要

生体膜グリセロリン脂質は組織や細胞によって異なり多様な分子種が存在する。sn-2位の脂肪酸はランズ回路(Lands, W. E. M. J. Biol. Chem. 1958)でホスホリパーゼA2 (PLA2)とリゾリン脂質アシル転移酵素によって入れ換えられ、組織や細胞に特異的なグリセロリン脂質を合成できる。それぞれの組織や細胞に特徴的な複数のリゾリン脂質アシル転移酵素が働き、多様な生体膜グリセロリン脂質を合成できる。本研究課題は、このリゾリン脂質アシル転移酵素の機能を解析することによって生体膜と細胞機能の密接な関係を解明し、新たな視点で細胞理解を深めることを目的としている。これまで10種類の酵素が2種類のリゾリン脂質アシル転移酵素ファミリーから報告されている。今回、その中でもリゾホスファチジン酸アシル転移酵素3(LPAAT3)に注目した。我々は2009年にLPAAT3はホスファチジン酸(PA)やホスファチジルイノシトール(PI)を生合成できる酵素として報告した。LPAAT3は精巣で週齢依存的に発現が上昇する。他のリゾリン脂質アシル転移酵素群よりも強く、出生後2週齢と比べ、15週齢では約1000倍上昇した。また、精巣細胞が成熟する過程で発現が誘導されており、精巣機能成熟に関与していることがわかった。さらに精巣細胞が分泌する脂肪酸をLPAAT3がリン脂質(直接的にはPA)に取り込んでおり、精巣細胞成熟に必要な脂肪酸分泌に関与していることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度はLPAAT3の細胞レベルでの解析が進んだ。これまで主に生化学的な解析が世界的にも中心であったが、細胞レベルでのLPAAT3の役割を示唆できた。また精巣細胞成熟に関与していることも、脂肪酸のリン脂質への取り込み作用からも示唆できた。以上は論文として報告できた。さらに、マクロファージでのリゾリン脂質アシル転移酵素の誘導なども検討できた。短時間刺激(リポポリサッカライド30分間刺激)ではリゾホスファチジルコリンアシル転移酵素2(LPCAT2)がリン酸化されるが、長時間刺激(16時間)では他の自然免疫刺激でも誘導されることがわかった。他にも各種リゾリン脂質アシル転移酵素ノックアウトマウス作成も進んでいる。

今後の研究の推進方策

各種リゾリン脂質アシル転移酵素ノックアウトマウスの解析を行う。ARDS、喘息、肺炎などの疾患モデル実験を行い、肺サーファクタント脂質生合成と呼吸器疾患との関連を調べる。また、生理活性脂質の貯蔵や産生能を調べる。特に強力な生理活性を持つ血小板活性化因子(PAF)産生との関連を調べる。アラキドン酸貯蔵からエイコサノイド(プロスタグランディンやロイコトリエン)産生への役割も調べる。さらに、脂肪細胞、肝臓、精巣の脂質組成を調べ、定常状態の機能維持に対する各種リゾリン脂質アシル転移酵素の脂質代謝への役割を調べる。他に、自然免疫応答時の各種リゾリン脂質アシル転移酵素の発現量変化、各種酵素の内在活性変化、リン脂質組成変化などを測定し生体膜生合成メカニズムを解析する。

次年度の研究費の使用計画

次年度は各種リゾリン脂質アシル転移酵素ノックアウトマウスの解析が進められる。これらマウスの維持のために、えさ代、床敷きなどがより必要になる。さらに、これらの解析において様々な関連遺伝子の発現量やリン脂質組成、リン脂質生合成活性(リゾリン脂質アシル転移酵素活性)を測定する必要がある。これらのために、RNAを抽出する試薬、定量的PCRを行うための試薬、リン脂質組成や酵素活性を測定するためのカラム、ガラス試験管、脂質基質(リゾリン脂質やアシルCoA)が必要となる。これらの購入のために研究費を使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Polyunsaturated fatty acids are incorporated into maturating male mouse germ cells by lysophosphatidic acid acyltransferase 3.2012

    • 著者名/発表者名
      Koeberle A, Shindou H, Harayama T, Yuki K, Shimizu T.
    • 雑誌名

      FASEB J.

      巻: 26 ページ: 169-180

    • 査読あり
  • [学会発表] LPCAT1はリン脂質リモデリングを介して肺のホメオスタシスに重要である2011

    • 著者名/発表者名
      原山武士、進藤英雄、清水孝雄
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      京都府(国立京都国際会館)
    • 年月日
      2011年9月22日
  • [学会発表] Lyso-PAF分解酵素としてのアルキルグリセロールモノオキシゲナーゼ2011

    • 著者名/発表者名
      徳岡涼美、北芳博、進藤英雄、清水孝雄
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      京都府(国立京都国際会館)
    • 年月日
      2011年9月22日
  • [学会発表] 肺サーファクタント脂質組成調節酵素LPCAT1欠損マウスの解析2011

    • 著者名/発表者名
      原山武士、進藤英雄、清水孝雄
    • 学会等名
      肺サーファクタント分子病態研究会
    • 発表場所
      北海道(札幌医科大学)
    • 年月日
      2011年6月25日
  • [備考]

    • URL

      http://square.umin.ac.jp/hshindou/

URL: 

公開日: 2013-07-10   更新日: 2013-08-28  

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