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2012 年度 実施状況報告書

Hippoシグナル伝達系の活性を制御する化合物の探索とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 23790325
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

中川 健太郎  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (70451929)

キーワード薬剤探索 / Hippo pathway / 腫瘍抑制 / 骨格筋再生
研究概要

これまでに転写コアクチベーターであるTAZの機能を促進する化合物の探索を目的に、東京医科歯科大学が所有する約20,000化合物からなるライブラリーを用いてスクリーニングを行い、40化合物がTAZによる転写の活性化を増強することを見出している。TAZは腫瘍抑制シグナル伝達系として知られるHippo pathwayにより負に制御されているが、間葉系幹細胞では分化制御に関わることが明らかになっている。スクリーニングから得られたTAZの機能を正に制御する化合物を種々の分化誘導系で評価したところ、マウス間葉系幹細胞の骨分化の促進、脂肪細胞分化の抑制など、生理活性を有するものが含まれていることが認められた。このうち、筋芽細胞株であるC2C12細胞の筋管分化を強く促進する4つの化合物に着目し、解析を進めた。ヘビ毒であるcardiotoxinによる筋損傷モデルに局所投与を行ったところ、1つの化合物が個体でも筋線維の回復を促進する作用を有することが認められ、またその際に骨格筋の再生を担う幹細胞であるsatellite細胞の数が増加していることを見出した。
また、TAZのパラログであるYAPの機能を抑制する化合物の探索を目的に、GFP付加したYAPの細胞内局在を核から細胞質への移行を指標として昨年度スクリーニングを行った。得られたヒット化合物に関して今年度は転写因子のTEAD応答性のレポーターアッセイを行い、YAP依存的なTEADの活性化を抑制する化合物を選択した。さらに腫瘍細胞の浸潤能や幹細胞性を抑制する化合物を峻別した。現在これらの化合物に関して腫瘍を移植したマウス個体において腫瘍抑制効果を検証している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

TAZの機能を促進する薬剤を複数見出すことができ、いくつかの化合物に関しては生理活性を有することを示している。特に筋分化に促進的に機能する化合物に関しては、筋分化過程で重要な機能を果たす転写因子MyoDとTAZの相互作用を増強する可能性を見出している。個体の骨格筋の再生を促進する作用を有することも明らかにしている。
YAPの阻害剤に関しては腫瘍細胞の浸潤能や幹細胞性を抑制し培養細胞レベルでは抗腫瘍性を保持することを示している。現在は予定通りマウスモデルにおける抗腫瘍効果の検討に進んでおり、本研究は順調に進行していると考えられる。

今後の研究の推進方策

(I) 筋分化を促進するTAZの機能促進剤に関しては個体の筋萎縮に対する作用を検討するほか、現在誘導体に関して筋分化促進活性の検証を行っている。より強い薬理作用を有する化合物を作成すると共に、化合物を利用したアフィニティーカラムを作成し、薬剤の作用点、作用機序を明らかにしたいと考えている。TAZは複数の転写因子と相互作用し、筋分化過程においてもMyoDだけではなくPax3やTEADなどとも相互作用する。これらの転写因子をどのようにTAZは選別して分化の各段階で相互作用し転写コアクチベーターとして機能するのか、化合物の作用点からTAZによる転写制御の分子メカニズムを解明したいと考えている。
(II)一方、TAZの活性化は腫瘍細胞の浸潤、転移を促進する危険性もはらんでおり、筋分化を促進する薬剤の腫瘍原性に関して細かく精査する必要がある。
(III)YAPの機能を抑制する化合物に関しては、腫瘍抑制作用が認められた化合物に関して誘導体を作成し、より活性の強い化合物の作成を試みる。またYAP阻害剤に関しても、直接の薬剤標的の探索を行う。

次年度の研究費の使用計画

研究費は実験を遂行するにあたり必要となる細胞培養用試薬や遺伝子導入試薬、抗体などの消耗品や実験動物の購入に用いる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Characterization of RSF-1, the Caenorhabditis elegans homolog of the Ras-association domain family protein 1.2013

    • 著者名/発表者名
      Iwasa H., et al.
    • 雑誌名

      Experimental Cell Research

      巻: 319 ページ: 1-11

    • DOI

      10.1016/j.yexcr.2012.10.008.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Yes-associated protein homolog, YAP-1, is involved in the thermotolerance and aging in the nematode Caenorhabditis elegans.2013

    • 著者名/発表者名
      Iwasa H., et al.
    • 雑誌名

      Experimental Cell Research

      巻: 319 ページ: 931-45

    • DOI

      10.1016/j.yexcr.2013.01.020.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] NuRD suppresses pluripotency gene expression to promote transcriptional heterogeneity and lineage commitment.2012

    • 著者名/発表者名
      Reynolds N., et al.
    • 雑誌名

      Cell Stem Cell

      巻: 10 ページ: 583-94

    • DOI

      10.1016/j.stem.2012.02.020.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A novel acetylation cycle of transcription co-activator Yes-associated protein that is downstream of Hippo pathway is triggered in response to SN2 alkylating agents.2012

    • 著者名/発表者名
      Hata S., et al.
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 287 ページ: 22089-98

    • DOI

      10.1074/jbc.M111.334714.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Expression of RASSF6 in kidney and the implication of RASSF6 and the Hippo pathway in the sorbitol-induced apoptosis in renal proximal tubular epithelial cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Withanage K., et al.
    • 雑誌名

      Journal of Biochemistry

      巻: 152 ページ: 111-9

    • DOI

      10.1093/jb/mvs056.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The RASSF3 candidate tumor suppressor induces apoptosis and G1-S cell-cycle arrest via p53.2012

    • 著者名/発表者名
      Kudo T., et al.
    • 雑誌名

      Cancer Research

      巻: 72 ページ: 2901-11

    • DOI

      10.1158/0008-5472.CAN-12-0572.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cancer susceptibility and embryonic lethality in Mob1a/1b double-mutant mice.2012

    • 著者名/発表者名
      Nishio M., et al.
    • 雑誌名

      Journal of Clinical Investigation

      巻: 122 ページ: 4505-18

    • DOI

      10.1172/JCI63735.

    • 査読あり
  • [学会発表] ケミカルライブラリースクリーニング再考:アカデミアで意味あるケミカルライ ブラリースクリーニングを実現するために2013

    • 著者名/発表者名
      中川 健太郎、どど 孝介 オーガナイザー
    • 学会等名
      第86回日本生化学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      20130911-20130913

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公開日: 2014-07-24  

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