研究課題
本研究ではHippoシグナル伝達系により活性が負に制御されている転写コアクチベーターTAZに関してその機能を促進する化合物の探索を行い、得られたTAZ活性化化合物の医療応用展開を目的として研究を行った。昨年度までTAZ活性化化合物の1つ、IBS008738がヘビ毒で誘発されるマウスの骨格筋損傷モデルにおいて筋線維の回復を促進する作用があることを見出している。本年度はこのIBS008738の薬理作用の解析をさらにすすめ、骨格筋損傷後にIBS008738投与により筋線維再生を担うPax7陽性の筋衛星細胞の増加がcontrol投与に比べて早い段階でおきること、また骨格筋分化を制御する転写因子であるMyoD陽性細胞数が増加する様子を認めている。マウス筋芽細胞C2C12細胞において、IBS008738の添加により筋管分化誘導時に細胞核におけるTAZとMyoDの共局在が増強すること、免疫共沈実験においてTAZとMyoDの結合が促進すること、またクロマチン免疫沈降実験によりIBS008738がTAZによるMyoDの転写活性化を増強することが認められ、IBS008738の筋分化促進作用はTAZによるMyoDの活性化の増強によることが示唆された。IBS008738にはマウスにおけるステロイド誘導性の筋萎縮からの回復を促進する効果も認められ、筋萎縮に対する薬剤の開発につながることが期待される。また、TAZのパラログであり、同じくHippoシグナル伝達系により制御されるYAPの機能を抑制する化合物探索および開発を引き続き行い、本年度は得られているYAPの細胞内局在を核から細胞質へと変化させる化合物にはYAPの機能を負に制御する127番目のセリンのリン酸化誘導によりYAPの機能を抑制している化合物が含まれていることを見出した。同時に得られているYAP阻害化合物にはHippoシグナル伝達系によるリン酸化以外のメカニズムによりYAPの機能を阻害する化合物が含まれており、これらの化合物の作用点の解析はYAPの制御機構の解明につながると考えられる。
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