研究課題/領域番号 |
23790327
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 隆弘 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (70414018)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | HGF / Met / 組織再生 / シグナル伝達 / 肝細胞増殖因子 |
研究概要 |
本研究は、juxtamembrane(JM)ドメインを介したMet/HGF受容体依存的形態形成やキナーゼ制御の解析、形態形成・再生異常や病態・発癌の解析を行い、増殖因子受容体に備わっている自己抑制機能のメカニズムと意義を明らかにすることを目的とする。本年度は(1)JMドメイン欠損変異Met発現細胞を用いたシグナル活性化制御の生化学的およびコラーゲンゲル内形態形成(管腔形成)を指標とする細胞生物学的解析および、(2)Met受容体活性化のリアルタイム可視化による再生・発癌制御の解析に取り組んだ。(1)WT MetあるいはJMドメイン欠損変異Metの細胞内領域とTrk/NGF受容体の細胞外領域とを融合させたキメラ蛋白質(Trk-Met)を永久発現するMDCK細胞は、平面培養下において、NGF添加によるMetシグナルの活性によりスキャッターする現象が確認された一方、コラーゲン包埋された3D培養下において、NGFを添加したとき、Metシグナル特有の生物活性である管腔形成する現象が確認されなかった。おそらくNGFによるTrk-Metの二量体形成が不十分であるが為に十分なMetシグナルが喚起されていないと予想される。今後、管腔形成を誘導できるだけの強いMetシグナルを喚起する別のシステム(構築)を導入し、本研究課題を遂行する。(2)Metと活性化Met会合蛋白質であるGab1それぞれに分割したルシフェラーゼおよび分割GFPを融合させ、HGFシグナルがONになりMetにGab1が会合した時にルシフェラーゼの活性もしくはGFPの蛍光が誘導される系の構築に着手した。これまでにMetとGab1それぞれに分割したルシフェラーゼを結合させた構築を完成させた。今後、構築した両発現ベクターを細胞に導入し、HGF添加によるMetシグナルの活性化状態をリアルタイムに検出する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
JMドメイン欠損変異Met発現細胞を用いたシグナル活性化制御の生化学的およびコラーゲンゲル内形態形成(管腔形成)を指標とする細胞生物学的解析において、本来、Trk-Metを永久発現するMDCK細胞を用いて、スキャッターや管腔形成誘導などのMDCK細胞に対するMetシグナル特有の生物活性を指標に、JMドメイン欠損変異による影響を解析する予定であった。しかしながら、Trk-Met WTを永久発現するMDCK細胞において、NGF添加依存的にスキャッターする現象は認められたものの、管腔形成する現象は認められなかった。この理由として、NGFによるTrk-Metの二量体形成が不十分であるが為に十分なMetシグナルが喚起されていないことが予想された。このことから、管腔形成を誘導できるだけの強いMetシグナルを喚起する別のシステムを取り入れる必要が生じ、新たな構築から始めることとなった。その構築は、WT MetあるいはJMドメイン欠損変異Metの細胞内領域と膜結合領域を付加されたFKBP12とを融合させたキメラ蛋白質(FKBP-Met)をコードするものであり、2つのインディペンデントなFKBP12どうしを二量体化させるdimerizerを用いてFKBP-Metの二量体化を形成させることによりMetの生物活性を発揮させるシステムである。幸い、生化学的解析から、dimerizer添加依存的にMetシグナルが強く喚起されていることが確認され、新しいシステムがうまくワークしていることが確認されている。今後、FKBP-Metを永久発現するMDCK細胞等を樹立し、dimerizer添加依存的に誘導されるスキャッターおよび管腔形成を指標に、JMドメイン欠損変異による影響を解析する。
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今後の研究の推進方策 |
組織傷害に伴うMet Ser985およびTyr1234/5のリン酸化状態の解析:ラット初代培養肝細胞を用いて、Met-Ser985リン酸化とMet活性化の制御、Ser985リン酸化Metの局在を生化学的に解析し、Ser985のリン酸化によってHGF依存的Met活性化が抑制される仕組みを解析する。Ser985変異Metを細胞に導入し、生化学的・細胞生物学的解析によって、Metの動態(細胞表面局在、エンドサイトーシスなど)を詳しく調べ、Ser985リン酸化を介した Met活性化抑制のメカニズムを解析する。JMドメイン欠損変異Met発現細胞を用いたシグナル活性化制御の生化学的およびコラーゲンゲル内形態形成(管腔形成)を指標とする細胞生物学的解析:内在のMet受容体の影響を除外するため、WT MetあるいはJMドメイン欠損変異Metの細胞内領域と膜結合領域を付加されたFKBP12とを融合させたキメラMet受容体をTet-OFFシステムにより発現レベル調節されるMDCK細胞の安定発現株を作成する。シグナル活性化、シグナル伝達分子の相違、細胞内分解・リサイクリング・局在を野生型 Metとの比較のもとに解析し、Jxtドメインの生化学的機能を調べる。受容体の活性化にともなうコラーゲンゲル内管腔形成、細胞極性、増殖異常などの相違を詳しく解析し、Jxt領域の生物学的意義・機能を調べる。Met受容体活性化のリアルタイム可視化による再生・発癌制御の解析:HGFによるMet受容体の活性化をリアルタイムに検出・可視化するためにMet受容体とGab1の特異的結合にもとづくスプリットGFP再構成系を用いたレポーターを確立する。細胞にスプリットGFP再構成系に必要なレポーター遺伝子を導入・発現し、HGF依存的なMet活性化をリアルタイムに可視化することが可能か調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたTrk-Metを永久発現するMDCK細胞を用いての研究を中止したために繰り越しとなった研究費を用いて、WT MetあるいはJMドメイン欠損変異Metの細胞内領域と膜結合領域を付加されたFKBP12とを融合させたキメラ蛋白質(FKBP-Met)を永久発現するMDCK細胞等を樹立し、2つのインディペンデントなFKBP12どうしを二量体化させるdimerizerを用いてFKBP-Metの二量体化を形成させることによりMetの生物活性を発揮させる系を立ち上げ、本研究課題の遂行にあたる。
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