研究課題/領域番号 |
23790328
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡島 徹也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20420383)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | O-GlcNAc / EOGT / EGF |
研究概要 |
上皮成長因子(EGF)ドメインの特異的な糖鎖修飾は、Notch受容体に代表されるように、受容体・リガンドの相互作用を制御する。これまでの研究で、O-フコース型糖鎖を合成するO-フコース転移酵素1(OFUT1)は、Notch受容体の機能と構造を制御することを明らかにしてきた。また、新規のEGFドメイン特異的なO-結合型糖鎖であるO-GlcNAc修飾を、世界に先駆けて同定した。これらの特殊糖鎖は、受容体とリガンド間の相互作用を調節することで、神経分化、体節形成などの形態形成に関与することから、タンパク質機能修飾に重要な翻訳後修飾であると考えられる。本研究課題では、O-GlcNAc修飾を触媒する糖転移酵素遺伝子Eogtのショウジョウバエ変異体を作成することで、EGFドメインのO-GlcNAc修飾の生理機能の解明を目指した。Eogt変異体の表現型の解析を行なったところ、Notchシグナルに関連した表現型は認められなかったが、Cuticleが上皮から剥離する表現型が観察された。実際、Cuticleから抽出したタンパク質を用いてO-GlcNAc抗体でイミュノブロットを行なった所、高分子量のタンパク質が選択的にO-GlcNAc修飾を受け、Eogtの変異体では、そのO-GlcNAc修飾が消失していることが明らかになった。免疫沈降の結果、O-GlcNAc修飾を受けるタンパク質としてアピカル側の細胞外マトリックスタンパク質であるDumpyが同定され、O-GlcNAcはDumpy依存的な細胞・細胞外マトリックス間相互作用に必要であることが明らかになった。以上の結果より、O-GlcNAc修飾は、細胞内で機能するのみでなく、細胞間もしくは、細胞と細胞外マトリックス間の相互作用に関与する新規のメディエーターとして働くことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画書で掲げた平成23年度の予定が遂行済みであり、かつ、平成23年末の段階で平成24年度の予定が平成完了できる目処がついているため。
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今後の研究の推進方策 |
哺乳動物においては、Eogtに類似した新規の糖転移酵素遺伝子(Eogt-like)が存在するが、その酵素活性や生理機能は明らかでない。Eogtは、EGFドメイン上のO-結合型N-アセチルグルコサミン構造の生合成に関与するO-GlcNAc転移酵素であることを明らかにしたが、Eogt-likeには同様の活性は見出されていない。Eogt-like遺伝子は、ショウジョウバエには存在せず、高等生物特有の翻訳後修飾に関与する可能性が示唆される。そこで、Eogt-likeのトランスジェニックショウジョウバエを樹立して、異所性にO-GlcNAc修飾を誘導し修飾分子を同定することで、本来の基質を同定するための大きな手がかりを得たいと考えている。また、ELAV-Gal4などの神経系にUAS-Eogt-likeを発現誘導できるシステムを用いて、神経系での表現型を観察することでも、Eogt-likeの基質や生理機能を推定するために必要な重要な情報が得られると期待している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度予算の次年度使用額は6,072円と少額であるため、次年度の予算と共に全額を消耗品費として使用する予定である。
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