細胞質のタンパク質や核タンパク質のO結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾は基本的な細胞機能を調節しており、また糖尿病や神経変性疾患の病因にかかわっている。この細胞内で起こるO-GlcNAc修飾は、単一のO-GlcNAcトランスフェラーゼ、OGTによって触媒される。前年度までに、新規なOGTであるEOGTが細胞外のO-GlcNAc修飾に関与すること、そして、ショウジョウバエにおいて、EOGTは膜に係留されている細胞外タンパク質のDumpy (Dp) をO-GlcNAc修飾し、Dp依存性の上皮細胞-マトリックス相互作用に必要であることを報告してきた。一方で、哺乳動物においては、EOGT以外に、EOGTに類似性を示すEOGT-like (EOGT-L) が存在するのを見いだした。そこで、本年度は、EOGT-LがEOGTの機能的を置き換えることができるか否か検討を行うことを目的とした。S2培養細胞を用いた実験より、EOGT-LはEGFドメインに対するO-GlcNAc転移酵素を示さなかった。同様に、ショウジョウバエにおいて、EOGTの過剰発現は、翅のwing blister形成を誘導するが、EOGT-Lの過剰発現では検出可能な表現型は観察されなかった。これらの結果より、EOGT-LはEOGTとは異なる基質特異性を有した新規のO-GlcNAc転移酵素である可能性が示唆された。
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