研究課題/領域番号 |
23790331
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
足立 誠 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30335244)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 細胞内シグナル伝達 / 細胞増殖 / 細胞質分裂 / X線結晶構造解析 / 遺伝子発現制御 / 癌 |
研究概要 |
1.IQGAP3の遺伝子発現制御の分子機構を明らかにするため、その発現パターンを再現するのに必要十分なプロモーター領域を同定した。その領域に結合し得る転写因子をプロモーター配列情報を基にデータベースを用いて、またはIQGAP3の発現パターンと関連性が深いと文献上の知見から考えられるものの中から、それぞれ複数同定した。これらの因子の培養細胞内におけるIQGAP3の発現制御への関与をChIPアッセイ・レポーターアッセイ・遺伝子の過剰発現・siRNAなどによって調べたが、現在までのところ関与が明確に認められる転写因子は見つかっていない。2.IQGAP3の細胞質分裂制御の分子機構を明らかにするため、分裂期にIQGAP3と相互作用する分子を免疫沈降および質量分析によって複数同定した。これらの分子の細胞内局在を定常的遺伝子発現細胞株の作成によって、また細胞質分裂への機能的関与をsiRNAによって、それぞれ明らかにした。また各分子のIQGAP3との機能的な関連性(各分子のsiRNAのIQGAP3局在への影響、など)についても併せて検討した。現在までにIQGAP3と関連性が示唆され、且つ細胞質分裂に必要と考えられる分子が数個見つかっている。3.IQGAP3と癌との関連を明らかにするため、データベースを用いてIQGAP3の有意な発現上昇が認められる癌腫の有無を検討したところ、胃癌・膀胱癌・肺癌・膵臓癌など複数の癌腫に強い関連性が認められた。4.IQGAP3のGAPドメインの機能を組換え蛋白質を用いた生化学的解析および結晶構造学的解析によって明らかにするため、蛋白質の発現精製条件の検討を行なった結果、安定的に大量の蛋白質を発現精製できる条件を見出した。しかし現在までに得られた組換え蛋白質(複数種存在する)に対し、予測される酵素活性は検出されず、また再現性ある結晶生成条件も見出せていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IQGAP3の遺伝子発現制御機構の解析においては、現在までに多数の制御因子を検討してきたが、関与が認められる因子の同定には至っておらず、結果その後に予定している研究課題を行なえずにいる。IQGAP3の細胞質分裂制御機構の解析についてはほぼ予定通りに進んでおり、複数の因子がIQGAP3の制御因子およびエフェクターの候補として見い出された。現在それらの更なる検証・絞り込みを行なっており、二年次には制御メカニズムを明確にしたいと考えている。IQGAP3の癌との関連の解析については、これまでに主にデータベースを用いた解析から胃癌・膀胱癌・肺癌・膵臓癌など複数の癌腫におけるIQGAP3に有意な発現上昇が認められることを確かめた。ただ現在のところこれらの癌細胞(株)においてIQGAP3の発現が実際に上昇しているか実験的に検証をしたり、またIQGAP3が癌化・細胞増殖に機能的に関与しているかについて解析は行なえていない。IQGAP3のGAPドメインの生化学的解析およびX線結晶構造解析においては、現在までに複数のコンストラクトを検討するなどして安定的に可溶性の組換え蛋白質が得られるようになったが、それらの生化学的な活性の検出および結晶の作成には成功しておらず、恐らく十分正しいフォールディングを維持した蛋白質が得られていないためだと考えられ、更なる条件検討が必要であると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
別欄に記載した通り、平成23年度の研究の進捗が当初の研究実施計画より遅れたため、結果として平成24年度に繰り越す研究費が生じた。本年度はより研究の進捗を早めるため、日々の実験計画立案の段階から工夫をし、無駄無く効率的に研究が行えるようにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究内容そのものに当初の計画からの変更は無く、本来平成23年度に行なうべきだった研究については平成24年度にそのまま繰り越す形で、しかし最終的には当初の計画通り平成24年度中に計画通りの成果が達成できるよう、全力で研究に臨む予定である。
|