研究課題
培養精子幹細胞のGS(Germline Stem)細胞が試験管内で多能性幹細胞mGS(multipotent Germline Stem)細胞に変化する機構を探るため、申請者はGS細胞の多能性がエピジェネティック制御で抑制されていると考え、特異的なエピジェネティック経路が破綻することでmGS細胞を生じるかどうか検討した。平成23年度にはsmall RNA経路について調べたが、small RNA経路はGS細胞の多能性制御には機能していないと考えられた。またヒストン修飾について候補遺伝子を絞り込み、GS細胞内でそれら遺伝子の発現抑制を行う実験系を構築した。平成24年度ではそれら候補遺伝子についてGS細胞内で発現抑制し、mGS細胞に変化するかどうか検討した。20種類のヒストン修飾遺伝子のノックダウンを検討したが、ノックダウンによりNanog遺伝子発現が亢進し、mGS細胞に変化するような遺伝子は見つからなかった。したがってGS細胞の多能性は複数の遺伝子によって複雑に制御されていることが示唆され、単一の遺伝子だけではなく複数の遺伝子ノックダウンを組み合わせてmGS細胞を誘導する方法を検討する必要があると考えられる。本研究でmGS細胞を安定的に誘導する方法は開発できなかったが、様々なエピジェネティック制御遺伝子を発現抑制することによりGS細胞の増殖/生存に必要なエピジェネティック制御遺伝子が見出された。ヒストンH3K9メチル化酵素G9aおよびGlp遺伝子, H3K4メチル化酵素Mll, Ash2l遺伝子などのノックダウンはGS細胞の細胞死を促す。そのため細胞死抑制とこれら遺伝子ノックダウンを併せたmGS細胞誘導方法について今後検討していく必要がある。またこれらの知見はGS細胞の自己複製機構を理解する上でも重要である。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Proceedings of the National Academy Sciences of the United States of America
巻: 109 ページ: 10885-10890
DOI:10.1073/pnas.1121524109