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2011 年度 実施状況報告書

殺菌に重要な食細胞NADPHオキシダーゼを構成する膜蛋白質の相互作用機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23790338
研究機関九州大学

研究代表者

宮野 佳  九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60444783)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードNADPHオキシダーゼ / Nox / 活性酸素
研究概要

食細胞NADPHオキシダーゼは、病原体微生物の貪食時にスーパーオキシドを生成する酵素であり、スーパーオキシドに由来する種々の活性酸素が強力な殺菌剤として働くことで、生体防御上重要な役割を果たしている。これまでに、食細胞NADPHオキシダーゼの活性化に必要な可溶性の活性化タンパク質の作用機構はかなり明らかにされてきたが、酵素本体である膜タンパク質Nox2(別名gp91phox)に関してはほとんど研究が進んでいない。Nox2の重要性は、その遺伝的欠損症である慢性肉芽腫症で示される。慢性肉芽腫症とは、Nox2による活性酸素の生成がまったく行われないため、食細胞である好中球の殺菌能が著しく低下し、幼少期より重篤な感染症を繰り返す遺伝疾患である。Nox2は同じく膜蛋白質であるp22phoxと会合している。Nox2とp22phoxの会合の重要性は、p22phoxの遺伝的欠損でも慢性肉芽腫症が引き起こされることからも示される。遺伝的にp22phoxが欠損した食細胞では、Nox2のmRNAは正常であるにもかかわらず、Nox2がタンパク質レベルで検出されないことから、Nox2とp22phoxの会合が、Nox2をタンパク質レベルで安定化すると考えられている。ところが、この会合によりどのようなメカニズムでNox2が安定化されるかはまったく不明なままであった。本研究で、私はNox2のp22phoxとの結合に必要な領域が膜貫通領域に存在することを明らかにした。さらに、膜貫通領域を構成する膜貫通セグメントのうち、いずれのセグメントが結合に関与しているかも同定することができた。これらの成果はp22phoxによるNox2のタンパク質レベルでの安定化のメカニズムを理解する上で重要な知見を与える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画調書に記しているように、初年度「平成23年度」は(1) Nox2とp22phoxの会合に関わる領域の同定と、(2) Nox2の細胞質領域と活性化タンパク質との複合体の構造解析を計画した。(1)に関しては、膜貫通領域だけでなくさらに詳細にどの膜貫通セグメント(アミノ酸20残基程度)が結合に関与しているか明らかにすることができた。これは、当初の計画以上に進展している。一方、(2)に関しても構造解析のための結晶作成に適したタンパク質の調製方法を確立することができた。残念ながら、現在のところ構造解析を行える結晶は得られていないが、今後はこの調製したタンパク質を基に結晶化条件の検討を進めていきたい。2つの計画の進捗状況から、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

初年度「平成23年度」はおおむね順調に研究を進展させることができた。今後は、同定したp22phoxとの結合領域内で報告されているNox2のアミノ酸置換によって引き起こされたタンパク質レベルでの発現量低下による慢性肉芽腫症の症例と照らし合わせつつ、p22phoxとの相互作用に重要なアミノ酸の同定や、p22phoxに非依存的にNox5のタンパク質レベルでの安定化に関わっている領域およびアミノ酸の同定を行なう。本研究で得られた成果は、Nox2のみならずp22phoxと結合するNoxファミリーが酵素活性を示すための最も重要なメカニズムを明らかにする上で貴重な情報をもたらすと考えられる。さらに、Nox2の細胞質領域と活性化タンパク質との複合体の構造解析のみならず、Nox2全長型の構造解析を目指すために大量発現系及び精製方法の構築も引き続き行う。初年度で、Nox2の大量発現には成功しているので、平成24年度はタンパク質の精製方法の確立を目指す。

次年度の研究費の使用計画

前年度からの研究をさらに進展させるために必要な「酵素」、「電気泳動試薬」、「DNA合成」、「細胞培養試薬」、「プラスチック器具」等の消耗品に研究費を使用する予定である。また、得られた成果を社会・国民に発信するために学会出席や研究成果投稿料にも研究費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Assessment of the Role for Rho Family GTPases in NADPH Oxidase Activation.2012

    • 著者名/発表者名
      Miyano K., and Sumimoto H
    • 雑誌名

      Methods Mol. Biol.

      巻: 827 ページ: 195-212

    • DOI

      DOI:10.1007/978-1-61779-442-1_14

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Selectively induced apoptosis in human neutrophils in the presence of oxidative phenoxazines, 2-amino-4, 4α-dihydryo-4α-7H-phenoxazine-3-one and 2-aminophenoxazine-3-one preceded by decrease of intracellular pH, depolarization of the mitochondria and inhibition of superoxide generation.2011

    • 著者名/発表者名
      Tabuchi T., Che X.-F., Hiraishi K., Adachi M., Miyano K., Sumimoto H., Tabuchi T.
    • 雑誌名

      J Pharmacol Sci.

      巻: 117 ページ: 139-148

    • DOI

      10.1254

    • 査読あり
  • [学会発表] 食細胞と非食細胞NADPHオキシダーゼの活性酸素生成活性の制御領域について2011

    • 著者名/発表者名
      宮野 佳、住本 英樹
    • 学会等名
      生体防御学会
    • 発表場所
      那覇
    • 年月日
      2011年6月30日

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公開日: 2013-07-10  

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