研究課題/領域番号 |
23790341
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
小椋 正人 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (10548978)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / プロテオーム / チロシンキナーゼ / ミトコンドリア / エネルギー代謝 |
研究概要 |
c-Srcは、増殖、分化、生存といった細胞の根源的機能に関与する非受容体型チロシンキナーゼである。申請者は現在までにc-Srcがミトコンドリアにおいて機能的に発現すること、および、このキナーゼ活性が酸化的リン酸化の制御を通して細胞内ATP量を調節することを解明してきた。さらに、細胞質内とは異なる微小環境であるミトコンドリア内特有のc-Src活性制御メカニズムが存在し、このメカニズムにc-Src複合体構成の変化が関与する可能性を見出している。 本研究では、エネルギー代謝支配因子であるミトコンドリア内c-Srcの活性制御に関与する新規相互作用タンパク質の同定と機能解析を目的とする。本年度は、ミトコンドリア機能変動およびc-Src活性変動が認められた刺激条件下(過酸化水素、増殖因子、栄養因子)おいて、細胞からミトコンドリア分画を得た。その後、c-Src特異的な抗体を用いて免疫沈降法を行い、ミトコンドリア内c-Src複合体を精製した。その後、このc-Src複合体をトリプシン処理し、質量分析により切断されたペプチドを同定することによって、複合体構成タンパク質を決定した。次いで、二次元電気泳動法による複合体構成タンパク質の解析からリン酸化、アセチル化、酸化修飾を含めた翻訳後修飾情報を得た。これらの同定タンパク質の多くは、ミトコンドリア特有の新規相互作用タンパク質であり、刺激条件により増減を示した。現在、直接活性制御を担う因子を決定すべく解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に従い、研究目的であるミトコンドリア内c-Src複合体解析を行った。二次元電気泳動法および質量分析によるプロテオーム解析により新規c-Src相互作用タンパク質を数十種類同定した。さらに、これらの相互作用タンパク質は、刺激条件によりさまざまに増減することも見出した。また、in vitro kinaseアッセイによる解析から、その中の複数のタンパク質がミトコンドリア内c-Src活性を直接制御する情報も得ている。このため、研究計画の変更等もなく、当初の計画通りに研究実施がなされている。
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今後の研究の推進方策 |
同定された新規ミトコンドリア内c-Src複合体タンパク質によるc-Src活性制御の分子メカニズムを詳細に検討するため、Src分子との結合領域をGSTプルダウンアッセイおよび相互作用タンパク質特異的な抗体を用いた免疫沈降法を用いて決定する。さらに、領域欠損型および一アミノ酸置換によるリン酸化部位欠損型(Y→F、S,T→A)の変異体分子を作製し相互作用メカニズムを明らかとする。また、これらの分子がエネルギー産生、活性酸素種産生やミトコンドリア膜電位に与える影響を解析し、ミトコンドリア機能制御メカニズムの全貌に迫り、エネルギー代謝疾患をはじめとする病態との関連性を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、当初の計画通りに、細胞培養培地類およびプラスチック器具(主にシャーレ)の購入に使用する。これは、研究計画においてミトコンドリアを対象に実験を行っていくためである。実験を成立させるためには、多大な細胞数(通常の細胞実験の3-5倍)を用いてミトコンドリアの回収を行う必要がある。さらに、遺伝子導入試薬の使用量も通常の実験よりも増加するため購入額が高めになる。そのほかに、二次元ゲル電気泳動試薬、市販抗体および免疫沈降用ビーズ、ミトコンドリア相互作用タンパク質抗体およびNDUFV2の特異的リン酸化抗体作製、siRNA作製、放射性同位体試薬等の費用に、相当額の消耗品費を充当する必要性がある。また、本研究課題において得られた知見の迅速な公表を目的に、国内学会にて2回、および国際学会にて1回発表する。そのため、研究費を国内および外国旅費に使用する。
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